第11話 異世界より顕現せし脅威
「うわっ、あれグリムじゃない?」
「戦闘は避けられなさそう」
俺たちの初のクエストの内容は次元の裂け目から現れた全身が黒い人型の怪物、グリムとの戦闘だ。
「ちょっと緊張してきたかも……」
「アリスなら大丈夫。相手は4体だけだから計画通りにやればいいよ」
それ以上に考慮しないといけないのが周りの建物などへの被害だ。被害を抑えてクエストを終わらせると当然パーティーの評価も上がる。
今回は特に第一印象が決まる最初のクエストなので細心の注意を払うこととしよう。
「アリス」
「うん!」
アリスは魔法を解除してグリムたちがいるところへ飛び降りていく。
「俺たちもアリスに続くぞ」
アリスが発動した魔法は魔力の壁を張る魔法、障壁の応用で結界を張った。
これは周りの建物への被害を最低限に抑えつつグリムたちの逃走を防ぐという2つの意味がある。
一瞬で破壊されてしまうため格上には一切通用しないがこういうシチュエーションではMVP級の活躍をしてくれる。
「じゃあこいつら集めるわねっ!」
セレナが発生させた引力に巻き込まれたグリムたちはお互いの体を押し付けあう形になり、4体が1ヶ所へとまとめられた。
「ヴィオラ、同時に斬るぞ」
「うん」
武器に炎を纏わせ攻撃力を上げて斬る。
体を横に真っ二つにされ生命活動を停止したグリムは引力が解除されその場に倒れた。
これらは全てアリスが結界を張ってから8秒間の出来事だった。
「はい、ではお願いしますね」
グリムたちの上下に泣き別れになり散らばった死体はギルドの事後処理班が連絡1つで片付けておいてくれる。
今回は被害ゼロで初のクエストをクリアした。
簡単な内容とはいえ一応命を懸けて戦っているのでそれなりの報酬は期待できるだろう。
「今回は余裕だったわね」
「学院に入りたてのころからチームワークは鍛えてたからね」
「これもアリスが私たちを巡りあわせてくれたおかげ」
「もうっ、ヴィオラは照れるこというね」
3人はそれぞれ感想を述べあい盛り上がっている。
まあ、なんというか3人が楽しそうでよかった。
クエストをクリアしたという情報はおそらくもうギルドに届いているので戻れば受付で報酬を受け取ることができる。
そのままゆっくり会話しながらギルドへと戻ってきた。アリスとセレナは報酬を楽しみしているのが満面の笑顔という形で顔に出ている。
「初のクエスト、お疲れ様でした」
「いえいえ、簡単な作業ですよ」
「それでは報酬の受け渡しですね。これをどうぞ」
そう言って渡された袋の中には32枚の銀貨(日本円で1枚1000円)が入っていた。
つまり1人あたり銀貨8枚ということになる。
1つ簡単な任務をこなしただけで普通の社会人の日給レベルの報酬が与えられた。
魔導師は他の職業に比べて離職率はかなり低い水準になっている。
ランク制度による経験の浅いパーティーが危険なクエストに向かい命を落とす可能性の排除。そしてこの高い報酬。
魔導師は国の安全を守るためには不可欠な存在だからこそここまで労働環境が整備されている。
これは離職率が低いことにも頷ける。
「それにしても、被害をゼロに抑えて初のクエストをクリアするとは素晴らしいスタートですね」
「仲間に恵まれたおかげです」
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