第5話 進化した魔法

 位置につき、試験官の合図を待つ。

せっかくの機会なのだからある程度現代の魔法を試すとしよう。


 現代の魔法は素晴らしい。700年前に比べて発動手順が簡略化され、より最適な形へと進化している。

700年前も今と同じように発動の簡略化自体は可能だったが出力が半減するため出力を限界まで高められる俺以外には扱えなかっただろう。


「スタート!」


 試すのはいいがここで調子に乗って力を出しすぎてしまうと前世の二の舞だ。出力は最低限に抑えて発動しなければならない。


 まずは風属性魔法を使ってみよう。

転生の直前で使ったように衝撃波を放つ。


 ゴーレムは衝撃波を受けたことで少し体が削れ後ろに倒れ込んだ。

もちろん転生の直前と同じ出力では辺り一帯が消し飛ぶのでかなり抑えている。だがゴーレムへの効きを見る限り少し出力を抑えすぎたようだ。


 次は威力を少し上げその分範囲を極限まで縮小し放つ。

現代の魔法は発動する効果のある程度の変更も可能となっている。


 狙ったのはゴーレムの右足付け根。範囲を狭めたことでレーザーのようになった風が足を貫き破壊した。


 ゴーレムはこれで行動不能。次でとどめを刺す。

もう少し試したいところだがどれだけ早く倒せるかもおそらく観点の1つとなっているのであまり時間はかけられない。


 エーテルマギアは人間だけのもので魔王としての魂を魔法で維持していた俺には与えられないものだとエーテルマギアのことを詳しく知った6歳の時は思っていた。

しかし、人間として生まれ直したおかげか俺の魂にはエーテルマギアが与えられている。そしてその効果は……










 影の実体化と操作だ。


 俺の体から離れると消滅するが強度、伸縮性、弾力などを自由に変更することができる。

今回は強度を上げて腕に纏い、さらにそこに火属性魔法を追加して攻撃力をあげる。


 力強く踏み込み跳躍し、ゴーレムの腹部へ向かってその拳を振るう。

次の瞬間、俺が殴った部分からバラバラに崩れ前方へとその破片が離散した。


 やはり楽しい。進化した魔法、汎用性の高いエーテルマギア、そして魔法の組み合わせに眠る無限の可能性。

ああ、今の俺は最高に恵まれている。


「終了ー!」


 ヴィオラの一撃で目が肥えたのか試験官の声は凛々しい女性の声をしている。


 次のゴーレムの用意と次の生徒との交代があるのでアリスたちが待つ待機場所に戻ることとしよう。


「ダリウスかっこよかったー!」

「ダリウスさんの影を操るエーテルマギア、すごく興味深いです」

「俺のことを評価してくれるのは嬉しいのだが、8人目の彼女のことは気にしなくていいのか?」

「それなら大丈夫。もう仲良くなったから」

「は?」


 俺がここから離れたのは約3分。その間に彼女と会話し交友関係を結んだというのか。


 やはりアリスの人の心を掴む力は凄まじい。魔導師よりもカウンセラーの方がアリスにとっては天職な気がする。


「この後帰る前に近くのカフェで4人集まることになったからよろしく」

「……ああ、分かった」









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る