第4話 実技試験
昼休憩の時間は終わり、入学試験を受ける生徒は普段の授業でも使われているであろう闘技場のような場所に先ほどの教室のメンバーで集められた。
「全員集まったことが確認できたのでこれより実技試験を開始します」
若い女性の試験官が試験開始を宣言した。
「今年の実技試験はゴーレムとの戦闘です」
その一言を聞いて周りがざわめき始めた。
無理もない、従来の試験は主に身体強化の基礎を見る体力測定のような試験、そして魔法の精密さを試される的当てなどが主だった。
試験で戦闘を行うのはこれが初だろう。
「これについてなにか質問はありますか?」
「はい」
1人の男子生徒が試験官の問いかけに手を挙げた。
「この試験ってエーテルマギアの使用は許可されるんですか?」
「もちろん可能です。それも評価の対象ですからね」
エーテルマギア。それは人間の魂にのみ生まれながらにして刻まれる魔法陣の名称。
効果は一般的な魔法と変わらないものや現在の技術で再現不可能なものまで人によって千差万別だ。
そしてそれは遺伝することもなければ他者間での受け渡しもできない。
転生前の俺はエーテルマギアの詳細どころか存在自体認知していなかった。おそらく魔族側に流れないよう徹底的な情報統制でもされていたのだろう。
おそらく魔族が絶滅した理由もそこに起因する。
「最初はあの人かー。トップバッターは緊張しそうだね」
「とはいえあのゴーレム、素材はどこにでもある岩のようだ。緊張していようが負けることはほぼ無いだろう」
ゴーレムは動きも鈍く、俺からすれば動く的と言っても差し支えないほどだ。
「ねえねえ、せっかくだしここで強そうな人何人か見つけておいてスカウトするのとかどう? 将来のパーティーメンバーになってくれるかもだし」
「少し気が早すぎるようにも思うが、やるだけやっておこう」
「もしかして私もスカウトされたということですか?」
「そういうことです」
そんな話をしている内に1人、また1人と試験を終えていく。そんな中でも一際輝いて見えたのは8人目の女子生徒だった。
「あの人すごいね。ゴーレムが圧縮されてバラバラになったよ」
「重力操作、あるいは引力の操作あたりか」
「あれは現在では再現不可能な貴重なエーテルマギアですね」
「2人ともめちゃくちゃ本気で分析してるね」
順調に1人ずつ試験を終えていき、次はヴィオラの番となった。
「自信満々のヴィオラさんの力、楽しみにしてますね」
「はい」
ヴィオラが位置につき、ゴーレムと向かい合う。敵を見据えるその目は先ほどまでとは全く違う殺意が満ち溢れるような目をしていた。
さらにヴィオラは左手につけていた指輪に魔力を流し始めた。魔力の流れを感知した指輪は自身の形を刀へと変化させた。
現代の技術を用いた武器の小型化。ヴィオラはそれを指輪として身につけることで最大限有効活用している。
それを見た他の生徒たちはざわざわし始めた。
別にこの試験で武器を使用することは禁止されていないし武器の小型化に驚いているわけでもない。
他の生徒たちが反応したのはこの歳で既に武器と魔法の調和を図っているということだ。
どんな英才教育を受ければ15にしてこんなことができるのか。成長速度だけを評価すれば俺を遥かに凌駕している。
「スタート!」
戦闘が始まった瞬間、ヴィオラは刀に炎を纏わせた。まさか武器に魔法の付与までできるとは。
魅せてくれるなヴィオラ。興味が湧いてきた。
この心が高揚する感覚。そうだ、こういうものを求めて俺は転生したのだ。
次の瞬間、他の生徒が目で追えない速度で走り、跳躍。
そのまま炎を付与した刀でゴーレムの体を両断した。切断され支えを失った上半身が断面を滑り落ちていく。
素晴らしい。自信があると言っていただけはある。
「……終了」
試験官も絶句していて終了の声に覇気を全く感じない。
そしてさらに順番は進み、今度はアリスの番がやってきた。
「近くで見ると結構大きいね……」
「スタート!」
試験官の声で両者共に動き出した。
アリスはゴーレムに向かって魔法を右手に構えながら直進した。
そのまま跳躍しゴーレムの腹部に右手を押し当て構えていた魔法、爆発を最大出力で発動した。
「吹っ飛べーーー!」
発生した大爆発によりゴーレムは跡形も残らず砕け散り、爆風でアリスも吹き飛ばされた。
あまりにも考え無しの脳筋戦法、無茶苦茶だ。
「終了ー!」
アリスはその言葉を聞くとゆっくり立ち上がり俺達がまつ待機場所まで戻ってきた。
「次はダリウスだね」
「ああ、行ってくる」
アリスの試験も終了し、いよいよ俺の番が回ってきた。
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