第2話 2周目は人間として
天井と最低限の壁で構成された駅のホーム。
この開けた空間には心地よい春風が吹きつけている。
「ねえねえダリウス~、入学試験緊張してる?」
「まあな。そういうアリスは緊張してるのか?」
「当たり前だよ~。私はダリウスほど強くないし頭も良くないじゃん」
隣で話しかけてくる人懐っこい少女は幼馴染みのアリスだ。
「アルカディア行きの列車はこれで間違いないな」
「早く乗っちゃお」
アリスが腰まで伸ばした金髪を揺らしながらスキップして列車に、そして俺もその後に続いて乗り込んだ。
「やっぱり田舎だから人の移動も少ないね」
「自由に座れる上に会話もできるから困りはしないがな」
目的地に到着した時すぐに降りられるように扉のすぐ近くに座り、アリスはそんな俺の隣に座った。
「この遠い場所に移動してる時間ってすごくワクワクするよね」
アリスは子供のように座席によじ登り窓から見える風景を楽しんでいる。
俺はダリウス。現在15歳の人間に転生した元魔王だ。
本来は魔族に転生するように魔法を設定していたがどうやら魔族は500年前に絶滅したらしく、人間に転生することになった。
歴史を調べた限り俺が転生の魔法を使用したのが今から700年前、つまり俺がいなくなって200年で魔族は人間に根絶されたと考えるのが自然だろう。
「もう着くぞ」
「りょーかい」
待ち受けていたのは先ほどのよりも整備され、列車を待つ人々で溢れ帰っているホームだった。
「今何時?」
「8時11分だ」
「時間は結構余裕あるね」
ホームから出るとこの世界ではなかなかお目にかかれなかった都会の町並みが広がっている。
ここはこの国、ヴァルセリアの首都となっているアルカディア。
国家機関や魔法の最新技術はここに結集されている。魔法の可能性を追求し続けてきた俺にとっては理想郷と言えるだろう。
「魔法学院はどっちにあるの?」
「向こうだ。せめて場所くらいは把握しておいてくれ」
「えへへ、ごめーん」
アリスのこういう他力本願なところは是非とも直していただきたい。俺はアリスの執事でもガイドでもないのだから。
「おはようございます」
「ひっ!?」
しばらく歩いていた時、偶然同じ道を通っていた学生にアリスが話しかけに行った。相手は突然話しかけられ驚いているがアリスはそのまま会話を続ける。
「初めまして。私、アリスっていいます」
「……」
その学生はアリスの挨拶に答えるべきか否か一瞬迷う素振りを見せたが、口を開いた。
「私はヴィオラです。あなたたちも魔法学院の試験を?」
「そうです。せっかくですし一緒に行きませんか?」
「……そうですね、一緒に行きましょう」
こうして顔立ちの整った白髪の女性、ヴィオラが加わり3人で学院へと向かうことになった。
少しの間学院での仲間との出会いなどを描く過去編になります。終わり次第そのまま本編に入ります。
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