トンネル事故

最初は僕が体験した話です。


今から10数年前の、当時まだカメラマンとして駆け出しだった僕は、1件取材を終えて帰社する途中、市街地からちょっと離れたトンネルで事故があった、どうやら重症らしいから行けとデスクから命を受け、現場に急行しました。


トンネル付近の事故を経験した方はお分かりだと思いますが、道路の都合上、事故が起きると脇道が無い限りかなり渋滞してしまいます。そのため、現場のはるか手前で足止めをくらった僕は、重さ10キロ近いカメラ(業界的にはENGと言います)を持って、数百メートル走って現場に急ぎました。三脚を持って走るカメアシさんを置いてけぼりにしてまで、急いで走っていたと後々当人から言われました。


冬に入りかけの時期で、トンネル内のアイスバーンで滑っての事故でした。あまり詳細に事故のことを書いてバレるのも避けるため被害者については書きませんが、とにかくカメラを回し始めた頃、ちょうど救急車で搬送されるところだったので、僕はそれを切れ切れの息で撮りました。


事故現場は実際のところそれほど撮るものが無く、夕方のニュースの時間もあるので手早く撮り終え急いで帰社し、無事オンエアすることができました。


オンエア後、先輩から現場まで必死に走ったこと、ちゃんと押さえるべき状況を撮れていたこと、素材がコンパクトにまとまっていたことを褒められ、僕はとても嬉しかったのを覚えています。


それから数日後。


仕事終わりの金曜日の深夜、実家に帰るためにそのトンネルを通りました。あぁ、事故があったトンネルだ。あの素材は珍しく褒められたんだよな。嬉しかったな。そんなことを考えてトンネルを抜けようとした時。


不意に携帯電話がブルっと震えました。

電話でもない、メールでもない震え方でした。


トンネルを抜けて止まった信号機で携帯を見ると、なぜか再起動がかかってバグっていました。


ふと、被害者は搬送後、亡くなっていたことを思い出しました。


あれ以来、不謹慎なことを考えるのは止めようと思うようになりました。


こんな感じで、カメラマンをやっていると不思議な、怖いことが何度かありましたので、書いていきたいと思います。ありがとうございました。

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