戦後会談

 ディザイアがベッドから目覚め、マリエとフェーデの二人と色々な話をしていた頃。


「……」


「……」


「……」


 臨時に設けられた会談の席において、世界各国の有力者が顔を突き合わせて向き合っていた。

 既に事態を裏から操っていた紅魔の牙は半壊。

 それに伴って革命軍も総崩れ。

 国土のほとんどを奪い返され、あとはゲリラを掃討するだけ……そんな段階にまでなっていた。

 ここで話すべきなのはただ一つ。


「さて、と」


 この後、解放されたオルスロイ王国をどうするのか、という問題である。


「此度の戦争の総括と行こうではないか」


 世界各国の有力者がいる中で、唯一、国の頂点。

 パテーマ王国の国王が口を開く。


「ここまで世界各国が動いて、何もありません、というわけにはいかないだろう。何処を落としどころにするべきかね?」


「我が国としては此度の遠征に掛かった費用をオルスロイ王国にある程度は負担してもらいたいですね」


 そして、それからすぐに議論が始まっていく。

 各国の代表が告げていくのは実質的には自国の要求と言えるようなものだ。

 現状、この場にこの戦争で最も存在感を現したものはいない。

 ゆえに誰も強気に出ていかない。

 何とも言えない、ふわっとした抽象的で具体的な案は出てこない無為な時間が続いていく。


「此度の戦争、誰が活躍したのか」


 そんな話し合いの中で、パテーマ王国の国王が口を開く。


「戦争の潮目を大きく変貌させたのは誰だ?」


 そして、語るのはこの場にいる誰もが待ち望んでいたことである。


「我々はかなり長い間、足踏みしていた。そして、王都に入ったのも二番手だった」


 実のところを言うのであれば。


「王都は既に竜を駆るエルフの、そして、その頂点に立つ男の庭となっていた」


「つまりは、貴国が最大の功労者だと?」


 この場にいる全員の頭の中に浮かんでいたのはとある少年の、パテーマ王国のとある貴族の少年のことである。


「ふむ。それは難しい話だな。問題の私が君たちの上で足踏みをしていたのだから」


 現状、最も良いのは誰かが得をすること。

 だが、誰も得をしないというのはありえない。


「ゆえに、若人に任せようではないか。小さな男爵家の当主。されど、最も多くの活躍を見せた者。時代の英傑と目され始めた男と、それと共に歩んだ王女の二人に此度の戦争の総括を。当然。選択の時に我は何も言わないし、介入しないと、ここで断言しておこう」


 ならば、ただの男爵家風情が得をしておくのが一番マシだろう、というのがこの場にいる全員の率直な気持ちだった。

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