これからも
一人で吐き続けていた己の弱音。
誰にも聞こえていない、そう思って一人、執務室の中で弱音を吐き続けていたのが……他人に聞かれていた。
よりにもよって、マリエとフェーデの二人に。
「えっ、ちょっ、まっ、えっ?」
その事実を前に、僕は困惑の声を漏らす。
「……マジで?」
「私がディザイア様に嘘をつくことなんてありません。すべて、事実です」
「あぁ、そうだぞ。全部事実だ。というより、我がディザイアの言葉を聞いていない、と思われる方が不愉快であるのじゃ」
「えぇ、確かにそうですね。私はディザイア様についてのことならば、何でも知っていますよ」
「我もであるなっ!」
最後の希望も込めて、縋るように聞いた僕の言葉に対して、二人は無慈悲にも本当であると断言してくる。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ」
何て、残酷なんだ。
僕は熱くなっていることを感じられる自分の表情を己の腕で隠しながら、視線をベッドの方に落とす。
「ぜ、全部聞かれているなんて……」
「別に恥ずかしがる必要はありませんよ。私は」
「うむ!我も普段は気丈に振舞いながらも、裏で不安に思っているディザイアを可愛いと思っていたぞ!」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ」
死体蹴りだよ……その、慰めの言葉はぁ。
「それに、勝手に僕は過大評価されている!なんてことを思っていた事実もはずい……」
もう、全部が全部、恥ずかしかった。
「ディザイア様」
「ディザイア」
そんな僕に対して、マリエとフェーデは距離を詰めてきながら、口を開く。
「私はディザイア様の為にいます。どれだけ心細くとも、どれだけご自身が不足していると思っていたとしても、私は必ず支えます。これまでは、不安を口にするディザイア様の隣に立てる勇気がありませんでした。遠ざけているのを感じていましたので……ですが、これからは支えます。ですから、どうか、これからも私を隣に。信用してください」
「捨てる、なんてことは絶対にないのじゃ。我はお前と添い遂げようぞ。じゃから、ずっと元気にあるのじゃ。我が支える故にな。竜である我の祝福ぞ。胸を張り、生きるのじゃ、強く、己の意思と共に」
そして、そのままこちらを全肯定するような言葉を告げてくれる。
「……君たち、甘やかせすぎだよ」
そんな二人の言葉に僕はぼそりと言葉を漏らす。
いくらなんでも、僕に寄り添い過ぎだよ。
……。
…………。
「ふぅー……でも、良かった」
不安、ではあったのだ。
自分が動き出すと決めた時から、二人に打ち明ける時が来ると思って。
愛想を尽かれるのではないかと、前にも大丈夫であると言ってくれていたが、それでも、ずっと僕は不安だったのだ。
「……二人とも、これからもよろしくね」
変に力の抜けてしまった僕は自然体のまま、二人へと笑みを向けながら口を開く。
「はい、もちろんです」
「うむ!」
そんな僕の言葉に、マリエとフェーデの二人は力強く頷いてくれるのだった。
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