目覚め

「知らない天井だ」


 己の視界に映る一つの天井。

 その知らない天井を前にして、僕はテンプレと言えるようなことを口にする。


「……うん」


 そんなことを口にしながらも、僕は半ば無意識に体を起こす。


「あー」


 何が、あったんだっけ。

 ……。

 …………。

 そうだ、僕は確か、紅魔の牙のトップであるオルモに会って、それで……。


「はぁー」


 ただの風圧だけで思いっきり、体を吹きとばされてそのまま気絶したんだった。


「結局……二人は、何とかしてくれたのだろうか」


 僕は実にあっさりと気を失ってしまった。

 ただ、それでも、僕が気絶するよりも前に、マリエとフェーデが駆けつけてくれていたはずだ。

 僕の記憶が確かで、希望による幻覚などを見ていなければ。


「というか、ここは何処?」


 後、気になっているけど、僕が今、寝かされている部屋は何処なのだろうか。

 ふかふかのベッドに寝かせている僕は今、妙に豪華な部屋の中にいた。

 シャンデリアによって照らされている部屋はかなり大きく、床は高そうなカーペットが敷かれ、壁は妙に綺麗な彫刻が施されている。

 寝かされているふかふかのベッドも天蓋付きである。よく考えてみれば、僕が最初に見ていたのは天井じゃなくて、この天蓋の方だ。


「うん、本当に何処?」


 こんな豪華な部屋、僕は知らない。

 なんか、王様が寝かされているような寝室で僕は寝かされているじゃん。

 全然落ち着かないんだけど。


「……傷も治っている」


 僕はドロリと、血の流れる感触が確かあった気のする頭を触って傷がないことを確認し、その上で自分の体調で何か、悪いところがないかどうかも含めて確認する。


「大丈夫」

 

 別に倦怠感も、気持ち悪さもないことを確認した僕はこの落ち着かない天蓋付きのベッドから出ていこうとする。


「んっ?」


 ちょうどそんな時。


「ディザイア様」


「ディザイアッ!!!」


 この部屋へと無駄に大きな扉を開けてあの後、何があったのかを知っていそうなマリエとフェーデの二人がやってくるのだった。

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