結局

 個での突破を掲げ、二人を呼びつける。


 自分の中で方針を定めた僕は今、自分の執務室へと呼び出したマリエとフェーデの二人へと共有していた。


「反対です。ディザイア様の身の安全に心配が残ります。最低でも、どちらかを護衛としてつける必要があると思います」


「反対じゃ。断じてあり得ぬのじゃ。何故、我が頷くと思ったのだ?」


 だが、そんな僕の案に対して、二人は猛烈に反対していた。

 自分がやろうとしていることは実に簡単である。

 圧倒的な力を持つ二人をフル稼働し、速攻で僕の知る紅魔の牙のアジトを一つずつ崩壊させていく。

 マリエとフェーデの二人の個の力によって、相手には何もさせずに全部を洗い流してしまうつもりなのだ。

 

「二人じゃないと意味はないんだよ」


 この作戦は二人がやる、ということが肝なのだ。

 一人でやって、中途半端に敵を追い詰め過ぎれば、最後の抵抗でこちらが手痛い反撃を食らう必要がある。

 相手には何もさせずに、となるとどうしても二人でやってもらう必要があるのだ。


「それでも無理です」


「だから、何なのじゃ?」


「二人は……」


 二人が自分の発案に反対することは端からわかっていた。


「僕を信頼できない?」


 ここからは、胆力の世界だ。

 何故かは知らんが、僕は周りから強いという風に勘違いされてしまっている。

 二人も異常なまでに自分への忠誠心を誓っていることから、僕を強いと勘違いしてしまっている可能性が高いだろう。

 だからこそ、その勘違いをここで利用する。


「僕は、我が領地で何人たりとも、乱暴させるのを許すつもりはない。そして、それをやるために、僕はここにいるんだ」


 最初は自分の死亡フラグを回避するという己本位の理由だった。

 でも、今は違う。

 多くのものを背負っていることを自覚した。

 自分のエゴで他者を己の意思で蹴落とした。

 前のように、甘い考えでここには座っていられない。


「僕は、とっくの昔に自分の命を懸ける覚悟があるんだ。あとは、君たちが首を縦に振ってくれるだけだ」


 僕なんて、ただの高校生でしかない。

 それでも、今の僕は多くの人の命を背負う領主なのだ。

 ここで引くわけにはいかなかった。


「……ぐぬっ」


「……むむぅ」


「二人が僕に何かあった時に知らせるための魔法をかけてくれればいいでしょう?僕だっていつも一人でいるわけじゃないんだ。駆けつけてくれればいい。それで、一旦は頷いてくれないかな?」


「……わかったわ」


「……少しでも危ないと思ったらすぐに呼ぶのじゃ」


「ありがとう」


 僕の言葉を受けて、二人は渋々と言った様子ではあるものの、それでも自分の言葉にしっかりと頷いてくれるのだった。

 

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