状況把握

 ルーナ王女殿下の要請により、僕が侵攻を停止させてから早いことでもう一週間。

 彼女の圧倒的な求心力もあり、何とか部下たちも認めてくれてその侵攻を何の問題もなく止めることができていた。


「それにしても……本当に止まらなきゃいけないのかよ」


「何だよ、ルーナ王女殿下の言葉に不満を垂れるっていうのか?」


「いや、別にそういうわけじゃないが……まだ、あの人も動いていないじゃないか。もっと、いけるんじゃないのか?って思ってな」


「まぁ、それもそうだが……」


 ただ、部下たち何をとち狂ったのか、僕のことを過大評価に過大評価を重ね、前線に出ればそれだけで状況を好転させるという謎の勘違いからの不満が噴出してきていた。


「どうしてこうなった……」


 僕が前線に立ったとしても、何も事態は変わらないのだが。

 剣を振った経験さえも、まともにない僕が前線に立ったところで何も変わらないと断言できる。

 何処から僕が強いなんているでまかせが流布し始めたんだが。

 マジ怖い、泣きそうである。

 何処から僕個人が強いなんていうよくわからない言葉が来たんだ……マジで。


「まぁ、一旦は考えることは別にあるか」


 とはいえ、今の僕には他に考えることがある。


「……動き出したな」


 問題はただ一つ。

 紅魔の牙が動き出した、それも大々的に。

 自分の暗部の目が紅魔の牙の動きを把握しきれなくなるほどに動いていた。

 それも、その紅魔の牙の矛先は世界連合軍の方ではなく、こちら側みたいだ。

 やっぱり、ルーナ王女殿下の身柄と共に大きく動くというのはあまりにも相手の地雷を踏み抜くことだったみたいだった。


「うーん……」


 自分の持つ戦力はあまりにも足らなかった。

 まともに動けるのはマリエとフェーデ、それと暗部の目くらい。

 ルーナ王女殿下を象徴として集まった面々はあくまで残党であったり、元はただの農夫だったりで使えものにはあまりない。

 相手が寄せ集めの革命軍ではなく、確固たる訓練を詰んだ紅魔の牙だともう何も出来ないだろう。


「あまりにも戦力が足りない……」


 実働可能なメンバーがあまりにも……これでひとつの組織と事を構えるなんて自殺行為。


「……」


 かと言って、ただ引いても敵が自分との距離を詰めてきて我が領地が火の手に包まれるだけ……それだけは避ける必要がある。


「賭けに、出るしかないかな、これはもう」


 これは、ある程度のリスクは覚悟の上で、大きく動くしかないか……。

 僕は最後、執務室の中で1人、覚悟を決めていくのだった。

 

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