停止
自分の執務室へと入ってきたルーナ王女殿下。
「何の用かな?」
そんな彼女へと僕は疑問の声を投げかける。
「まずは感謝の言葉を。貴方のおかげで我々は自国の領土を、自分の手で取り戻せつつあります。これは何よりも代えがたい事実です……ありがとうございます」
そんな僕へとルーナ王女殿下は深々と頭を下げてくる。
「その上で申し上げさせてください。既に兵士たちの体力は限界に近づいています。彼らの士気は高いですが、それだけで何とかなるほど甘くはありません。ここまで尽力していただいた手前、申し訳ありません。それでも何とか、侵攻の停止をしてはくれないでしょうか?」
「ふっ」
「……ッ!?」
その言葉を受け、僕はそっと笑みを浮かべる。
「わかっているよ、君の陳情を受け入れ。侵攻をここで一旦止めようか」
来たぁぁぁぁぁぁぁァァァアアアアアアアアッ!
止め時かっ!めちゃくちゃ好戦的で、このまま王都にまで!と叫ぶオルスロイ王国の残党たちの声を静め、うまい感じに軟着陸させてくれそうな人物からの停戦要請がっ!
ここで止められる!浪費を抑えられるっ!
「そのための準備も既に終えてある。あとはルーナ王女殿下が下の人間に命令を下すだけだよ」
「い、いいんですか……?」
内心の大喜びを隠しながら、すまし顔で言葉を話す僕の前で驚愕の表情を浮かべて固まっているルーナ王女殿下。
「何がだい?既に世界連合軍の方は動いた。なら、僕たちの仕事はほとんど終わりだ」
そんな彼女に僕は素直な疑問を返しながら、自分の考えを話していく。
「きっと、向こうは誰が多くの利権を獲得するのかも決まっていない状態で動き出しているだろうからね。ここで止まっても戦後、主権は君たちの方に戻ってくるはずだよ。自分以外の誰かのものになるくらいなら、元の持ち主に返して恩人ぶった方が得だろうからね」
もう動く必要はない。
いいんですか?なんて聞かれることはないかな。
「……ッ、そこまで、考えて?」
「……ん?これくらいは普通でしょう」
オルスロイ王国の後始末がごたつくのは避けたいからね。国境として領地を接するうちとしては。
紅魔の牙の行動がなくとも、遅かれ早かれ動かなければいけなかった。
「それじゃあ、動きは早い方がいい。君たちの国のことはルーナ王女殿下に任せる。僕が裏で色々と処理をやっているから、お願いね?」
「はいっ!」
僕の言葉に頷いたルーナ王女殿下はそのまま自分の執務室を後にしていく。
「しゃぁっ!」
そして、また一人となったことで僕は改めてガッツポーズを取るのだった。
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