出費
動くことに決めた僕はたった一つの博打へと打って出ていた。
このままちまちま紅魔の牙の小さな拠点を潰していてもいいが、それだと戦局は進まないし、結局のところ、自分の領地に出るかもしれない被害を減らすことが出来ない。
出来るだけ物事を早めに終わらせたい……そこまで考えた中で、やっぱり、この戦争を終わらせるためにやらなきゃいけないのは何時までも悠長なことをやっている世界連合軍のケツを叩いて早急に軍を動かすことだと判断した。
戦後交渉へと入るにしても、向こうが慌てて動いてくれる方がいいしね。
というわけで世界連合軍のケツを叩くことにしたわけだが……。
『そんなの簡単だよねー』
ちょっと昔の僕はそのケツを叩くのは簡単だと思っていた。
彼らはあそこまで大規模に集まって何の成果もなく戦争を終わらせることなんて出来るはずがない。
こっち側で少し動きを見せれば、向こうはもう動かざるを得なくなるだろうと思っていた。
だが、実際にやってみて思う。
「ふごぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお」
溶ける。
金が。
想像を、超えて。
「んにゃぁぁぁぁぁあああああああああああ」
まだ軍を動かしてそこまで長い時間が経っているわけじゃない。
それなのにも関わらず、信じられないくらいには大量の金が浪費されていた。
別に戦闘計画が悪いわけじゃないと思う。
まずはマリエにお願いして、大きめの紅魔の牙のアジトを幾つか叩いてもらって情報網を寸断。
その上で、そのまま革命軍の方の指揮官の暗殺もお願いする。
ここまでマリエの個に頼って敵をガタガタにさせた中で、ルーナ王女殿下を中心として密かに集めていたオルスロイ王国の残党たちに、現地で集める革命軍に不満を抱く一般市民。
それらを活用しての大進撃を行っている。
自分が動かしている戦力なんてマリエに、自分の護衛であるフェーデ、それと今も色々と動いてもらっている暗部の子たちだけ。
それだけでも、兵站やら何やらを自分が支えているため、信じられないほどの出費になっていた。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、死ぬっ」
自分の金が溶ける。
無一文になっちゃう。
泣く。
僕は一人、占領したオルスロイ王国の街の屋敷の執務室で倒れながら涙を流す……そんな中で、自分の耳にこの部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。
「……うぅん」
それを受けて、僕は慌てて背筋を伸ばし、扉が開けられるのを待つ。
この場には防音の結界が貼ってある。
返事をしても向こうには聞こえないし、ノックすれば返事無しに入ることをすべての部下に許可してある。僕が何もしなくとも勝手に開くだろう。
「失礼します」
そんな扉を開けて、部屋の中に入ってきたのはルーナ王女殿下だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます