自覚なき英傑
領民の為の政治を行うため、自分の義母に弟を追い出した。
その事実から、半ば強迫観念的に民衆の為にという思いが押し上げられているディザイアにとって、領民に被害が出るというのは看過できない事実であり、彼の持つ逆鱗の一つである。
ディザイアは言うだろう。
自分はたまたま、運に恵まれているだけのただの一般人。所詮は元高校生の未熟者でしかないと。
だが、その実態は大きく違う。
ディザイアは常に人を魅了してやまない不思議なオーラを漂わせるまさに英雄というに相応しいだけの格を見せる時代の寵児であり……そして、その実力もそのオーラに負けないものがある。
完成されたポーカーフェイス。
優れた文明の義務教育で培った決して他人にはない教養。
違う世界とはいえ、人類の歴史を俯瞰して教養的に見てきた経験。
「ここがディザイア様の言っていた紅魔の牙のアジトの一つだ。あのお方の智謀によってその場所を示した場所となる」
そして、世界を外から知っているチートともいえる原作知識。
ディザイアは間違いなくこの世界の中でトップクラスの知略で動ける英傑の一人だった。
「わかっているだろうが、一応確認だ。俺たちの任務はこのアジトを潰すと共に有能な情報を集めることだ」
「「「……っ」」」
闇夜に溶け込む黒き衣を覆う、その場の空気と一体化した数人の名を捨てた者たちは闘志を漲らせる。
「我らを救った。我らに生きる意味を与えた。我らのすべてたるディザイア様の命に背くな。必ず最大の成果と共に生きて帰るぞ」
「「「……」」」
ディザイアに魅入られた者たち。
彼に永遠の忠誠を誓い、マリエの元で強さを手にした暗部の目は動きだす。
本来は知られてるはずのない。
最大限に秘匿されているはずの紅魔の牙のアジトへと、その手を静かに手を伸ばし始める。
「どういうことだ……?」
そして、それは。
自分たちのアジトの場所がバレ、攻撃を受けている事実は、紅魔の牙の頂点に立つ男へと無視できないほどの驚きを痛みを知覚させるのだった。
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