秘密の戦力

 僕は前々から自領の戦力拡張を第一の目標としていた。

 そのために動き出したのはマリエを助けたのよりも前の話で、長期的なことを見据えてのものだった。

 

「……もうそろそろかな?」


 僕がやったことは簡単で、親に捨てられてスラムで飢え死にしそうになっている子供たちを掬い上げ、教育してしたのだ。いっぱしの戦力になれるようにと。

 マリエの陣営加入で完ぺきな教育係が出来、フェーデの陣営加入で資金力が上がった。

 自分が密かに作っていた子供たちを育ててきた組織。

 その最年長になってくると既に二十歳近いところにまで育ってきている。

 もう既に動けるような組織になっていた。


「うん、そうだね」


 僕はマリエの方から寄せられる報告書を眺めながら考え事にふける。

 子供たちを育てて作った組織の名は暗部の目。

 名前の通り、諜報組織である。

 それを僕は紅魔の牙の対策に動かそうとしていたのだ。


「……」


 僕は動けそうな、戦力になれそうな、紅魔の牙と戦えるだけに成長していそうなメンバーをピックアップし、どれくらいの人数になっているかを確認していく。


「……数が足りない」

 

 とはいえ、その作業はすぐに終わる。

 最初の方は資金力がまるでなかったせいで育てていた人達が少なすぎて、今、戦力になってくれている人達も驚くほどに少ないのである。


「どこまでなら、行ける……?」


 自分の記憶の中にある紅魔の牙の基地の位置、そして、そこに配置された戦力の事を何とか思い出しながら、行動方針を組み立てていく。

 数ある戦力を、最大限に活躍するのはトップの役目だ。

 みんなは一生懸命、子供の身でありながら、マリエのキツイ訓練に耐えて育ってくれたのだ。

 ここで自分のポカで彼らを失ったり、さほど戦果をあげられない。

 なんて時代にはしたくない。

 最大限、活用してあげるのが僕に出来る精一杯の事であり、自分の義務だ。


「……これなら」


 そんな作業を僕は一人、普段の執務業務が終わった後、夜遅くまで続けているのだった。

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