次々と

 サボりたい。

 勝てるわけがない。

 そんな考えに支配される僕であるが、そんな自分の思惑とは別に紅魔の牙はこちらの事なんて考えずにやってきていた。


「これで五回目か」


 国王陛下を見送ってから早いことでもう二週間。

 既に紅魔の牙より派遣された刺客が既に五回も、この場に訪れてしまっていた。


「むむぅ……」


 今のところはマリエとフェーデの二人が何とかしてくれているが、逆に言うと二人が必要となる。

 自分のことを心配しているマリエとフェーデはなるべく屋敷から離れようとしない。

 そのせいでフェーデが温泉に行く機会も、マリエが領地内の魔物を狩る頻度も著しく減ってしまっていた。

 その上、だ。


「僕の楽園が……」


 万全を期すため、マリエとフェーデは僕がいつも一人でいる執務室に入っての護衛がしたいと言われているような状況だった。

 必要性は理解出来る。

 だが、だからといってそう簡単には頷けない。

 この執務室は僕の楽園なのである。

 自分がどれだけダラダラと過ごしていても許される理想郷。それこそが執務室だ。

 ブツブツと文句に弱音を吐きながら仕事出来るのはここしかない。


「はぁー」


 マリエとフェーデの前でも出来るだけ弱いところを見せたくない。

 威厳ある領主としての立場を維持し続けたいのだ。

 情けない姿を見られて向こうに愛想を尽かされるのは真っ平ゴメンである。

 そんなことを考える中。


「ディザイア様」


 僕の執務室へとマリエが転がり込んでくる。


「どうしたの?」


「またも紅魔の牙からの刺客が今回は一人だけ送られてきましたが、しっかりと退治しておきました」


「……そうか。それじゃあ、また、地下牢の中に入れておいて。尋問は後でいいよ」


「承知しました」


 僕の言葉にうなづいたマリエは片手に持つ刺客を引きずって地下牢の方へと向かっていく……刺客の人、めっちゃボコボコにされていたなぁ……痛そう。


「はぁー」


 これで六回目だ。

 差し向けてしすぎでしょ、刺客。もうちょい頻度を下げてくれ、頼むから。

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