何の話

 いきなり話を振られたことによって動揺の声を漏らしてしまった僕は今。


「……そうですね」


 そのすってんきょうな声を誤魔化すかのように渋い声を出して真面目な表情を浮かべて相槌を打つ。

 ……いや、この後、どうすればいいの?全然話聞いていなかったんだけど。

 めっちゃ、国王陛下も、ルーナ王女殿下もこちらの方を見てくれるんだけど。


「所詮、あくまで自分は一介の男爵家の当主にすぎません」


 このまま黙っておけば終わることはない。

 そう感じた僕は全力でお茶を濁しにいく。


「ここで何かを言うことはありませんよ」


 自分が行ったのは立場を理由にした回答の拒絶であった。


「そう、ですか……」


「ふむ。そうか」


 ……。

 …………。

 ちょっとばかり、悲し気な表情を浮かべているルーナ王女殿下と思案の表情を浮かべている国王陛下。

 うん、二人の反応を見るに、最善ではないけど、そんなおかしな答えを自分が出したようには見えないかな。

 ちゃんとかみ合った話になったようだ。


「それでは一男爵家の当主であるロロノア男爵家の当主へと、国王たる我が命じましょう」


 なんてことを思い、勝手に満足していた中で、何とも不穏なことを国王陛下が口になさる。


「……はい。何でしょう」


 えっ?何?怖いんだけど。


「す、スチュワード国王陛下」


「案ずるな。ルーナ王女殿下。貴方のことを我は見捨てんよ」

 

 ……ま、マジで何?

 本当に怖い。

 僕が聞いていなかった頃、何の話をしていたの?


「ルーナ王女殿下の身柄のことは君に任せる。ロロノア卿。汝が彼女を支えるのだ。ちょうど、領地の位置的にオルスロイ王国は隣で動きやすいだろう」


「そ、そうですね」


「我々は別のルートで動き、革命勢力と当たる。ロロノア卿はルーナ王女殿下を中心とする反革命を標榜する白軍として、革命勢力に対して、徹底抗戦せよ。負けることは許さぬ。何としてでも勝利せよ」


「スチュワード国王陛下っ!」


「……」


 いや、なんでぇーっ!?

 そんな話だったのぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?

 えっ?はっ、えぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええっ!?


「承知、いたしました」


 とはいえ、だからと言ってここで嫌だとは言えない僕は自分の軽率な行動を呪いつつ、国王陛下の言葉に頷くのだった。

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