懇願

 どう、何が、どうなって、今があるの?


「どうか、……どうか、お助けください。英雄たる貴方の力が必要なんです」


 僕はなぜか、自分を英雄として扱って助けを懇願してくるルーナ王女殿下を前に困惑の声を漏らす。

 王女が何でただの男爵家に頭を下げているの?

 

「聞いてくださいっ!」


「聞きましょう」


 困惑する僕は、ただそれでも当主として情けない姿を見せてはいけないという一心で何かを聞いてほしそうなルーナ王女殿下の言葉に頷く。

 その際、僕の表情は決め顔固定で、言葉は丁寧ながらも為政者としての格をもって。

 これだけで僕はありとあらゆる局面を乗り切ってきた。

 何となくの威圧感だけで勝てるっ!


「今回の革命には裏があるのです……私たちの為政が悪かった、というのなら、自分たちは助けを求められるような立場にありません。確かに、私たちの為政は完璧じゅありませんでした。ただ、それでも……っ!」


「でしょうね。わかりますよ。これの裏には何かで得をしたい者たちの影があるということは」

 

 そう簡単に市民革命なんて起こせるものじゃない。


「……っ!?」


「このまま革命が続いてもオルスロイ王国の民たちにとっていい結果は訪れないでしょうね」


 まぁ、起こせたとしても平民にとって幸せな結果にはならないだろうけど。

 フランス革命は一つの事象として見るとカスだったし、そもそもとして、ナポレオンがいなけりゃフランスという国が消えていた可能性すらもあったろうし。


「国は荒れ、他国からの介入を食らい、死者が積み重なってオルスロイ王国は地獄でしょう。その中で、特をするのは裏にいる何者かでしょう」


 そこまでの話になるかは知らんけど。


「え、えぇっ!そうです。わかってもらえましたかっ!?私はただ、自国の民を救いたいのです!その気持ちは嘘じゃありませんっ!」


「えぇ、わかっていますよ。ただ、その上で、相談する相手を間違っていませんか?僕に頼まれても、ただの男爵家が当主。何も出来ませんよ。それを頼むのは我が国の国王陛下などでしょう」


「貴方以上の適任はいないでしょう。この領地にはかの竜がおりますし、そして、何よりも、貴方という英雄が今、自分の前に立っています。その中で、国の為に私が何もしないことなど、許されるはずがありません」


「竜に……頼むのが、そう簡単なことだとお思いで?」


「……っごく」


 フェーデならうっかりで大量の死者を出しそうだし、あまり頼るようなものじゃないと思う。

 ちょっと竜に頼るのは怖いと、そんな当たり前のことに気づいて改心してほしいんだけどぉ……。


「私の命なら捧げられますっ!」


 うん、なんでぇー?

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