応接室

 裏路地で仮面の男たちから襲われていたボロボロの少女を屋敷へと連れて帰ってきた僕はそのまま、彼女をまずは風呂に入れさせた後、まだ捨てていなかったカターシャのドレスを着させていた。


「それで、と」


 そして、少女がしっかりと身なりを整え終えた後、彼女を応接室に通した僕はゆっくりと口を開く。


「僕はこの領地を治めるロロノア男爵家の第6代目当主、ディザイア・ロロノアだ」


 あくまで、貴族らしい身なりをしてはいるものの、今のところはただ追われていただけに過ぎない少女に対して、僕は敬語等を使うこともなく自分の自己紹介を行う。


「貴方の名前は?」


 そして、自分の自己紹介を終えた後に少女の名前を尋ねる。


「私は、オルスロイ王国スミスカート王朝における王位継承権第六位のルーナ・スミスカート第一王女にございます」


 そんな僕の言葉に対して、少女はこれ以上ないほどに優美な仕草で一礼してみせる。


「……思ったよりも上だったぁ」


 少女、ルーナの自己紹介を聞いた僕は思わず天を仰いでしまう。

 想像以上に上だった。

 この時期に流れ着いてくる上流階級らしき服を着た少女とか、オルスロイ王国関連かな?とは思っていたが、想像以上だった。

 伯爵家の娘かな……?とか思っていた僕の予想は一体何だったんだ。


「いえ、それでも、私は既にオルスロイ王国を追われた身。決して、上などではありませんよ」


「いや、そんなわけにはいきませんよ。私はオルスロイ王国と長年の友好関係を結ぶパテーマ王国の男爵家が当主ですから。貴方のことを軽視することなど出来るはずもございません。ルーナ王女殿下。これまでの非礼をお詫び申し上げます」


「……本当に、いらないんですけどね。それでも、貴方の謝罪を受け入れます」


「ありがとうございます」


「「……」」


 さて、と。

 どうしよう。革命中の王族の身柄とかめちゃんこ困るのだが。

 王家の方に連絡するのは確定として……ルーナ王女殿下の身柄を王都の方に届けるのは僕の役目?ちゃんとお上は迎えを出してくれるよね?

 いや、もしも、迎えを出してくれたとしてもさ。

 迎えが来るまでの間、家に彼女を滞在させるの?使用人が一人しかいないようなうちの領地に?


「……」


 表ではスカしたような表情を浮かべながら、内心でどうするかを僕はただひたすらに悩んでいく。


「よろしいでしょうか?」


 なんてことを悩んでいる間に、ルーナ王女殿下の方が口を開く。


「どうぞ」


 僕はとりあえず、向こうの話を聞くことにした。


「……貴方を、英雄としてお願い申し上げます。どうか、私の国を、助けてくれはしませんでしょうか?」


「……」


 うん、なんでぇー?

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