ボロボロの少女
裏路地から聞こえてきた少女の悲鳴。
「行くよ」
それを聞く僕は迷いなくそちらの方に向かっていく。
僕はこの街の領主であり、うちの領地で悲鳴を上げている人を無視することは出来ない。
「承知しました」
僕は自分の護衛であるマリエと共に裏路地を迷いなく進んでいく。
「わ、私はこんなところで捕まるわけには……っ!?」
悲鳴が聞こえてきたところにやってきた僕の瞳に飛び込んできたのはボロボロになってしまっているドレスを身に纏っている少女に、それを囲う顔を仮面で隠した数人の男たちであった……。
ふむ。面倒事だな、これは。
「何をしているっ!」
一目見るなり面倒事であると判断した僕は、それでもしっかりと割って入っていく。
「……ッ!?」
「我が領地での乱暴事。当主として見過ごすことは出来ぬぞ」
変装の魔法を解いて当主としての姿となった僕は仮面の男たちに視線を送りながら、少女の方に近寄っていく。
「お前たち、傷だらけのか弱い少女を囲って何のつもりだ?」
「貴方には関係ないことです」
僕の疑問に対して、仮面の男たちのうちの一人が答える。
「僕のお膝元にまでやってきてずいぶんな言い草だな」
「……申し訳ございません。ですが、これも必要なことなのです。どうか、ここは一度。引いてはくれないでしょうか?」
「そんな無茶苦茶を許すわけないだろう?せめて、公的な書類を僕の元に送ってくるんだな」
自領内で、勝手に流血沙汰を起こそうとしている奴を、仕方ないことだからねっ!と見過ごせるはずもない。
別に、自領じゃなかったとしても、少女が襲われている場面は助けに入ると思うが。
「……そうですか」
一切妥協する様子の見せない僕の言葉に少しばかり肩をすくめながら頷いた仮面の男たちのうちの一人が、そのまますぐに僕との距離を詰めようと動き始める。
「あっ……?」
だが、一歩目を踏み出した段階で、何時の間に抜いていた剣を握っていた右腕がぽとりと落ちる。
「貴方、ディザイア様に剣を向けましたか?」
右腕を失った仮面の男。
そのすぐ隣には剣を握るマリエが立っていた。
「……っごく」
マリエより向けられる殺意を前に、一歩前に足を踏み出した状態で片腕を失って血を溢れさせている仮面の男はその態勢のまま一歩も動けない。
「マリエ。全員、生け捕りにしろ」
そんな中で、僕はマリエへと静かに命令を下す。
「承知しました」
その僕の命令にマリエは恭しく頷いて、ゆっくりとその手にある剣を持ち上げる。
「「「……ッ!?」
そんなマリエを前に、仮面の男たちも構えだして何とか相手の攻撃を避けようという態勢をとる。
「ディザイア様の為に」
だが、その次の瞬間には血の雨が降った。
この場にいた仮面の男たち全員の四肢が跳ね飛ばされると共に、自害用に口元へと仕込んでいた毒が仕込まれていた口まで落とされているのだった。
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八月に入り、夏休みにもなったということで新作です!
『ゲームのモブに転生したワイ、ルンルン気分でゲームの世界を観光していたら、落ちぶれた悪役令嬢を拾ってしまう』
『https://kakuyomu.jp/works/16818093082189695855』
自信作なので、読んでくだせぇっ!
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