執務

 正式な当主としてロロノア男爵家の頂点に立った僕は。


「あー、書類が消えない」


 これまでと同じように自分の元にやってくる尽きることのない大量の書類に頭を抱えて項垂れていた。


「頑張るのじゃぞ?お主は当主?とやらなのじゃからなっ!」


 そんな僕に対して、自分の隣にいた温泉での朝風呂を終えてサッパリしているフェーデがしっかりとするように小言をぶつけてくる。

 今は魔物退治のために外出しているマリエの代わりにフェーデが僕の護衛として隣に立っている最中だった。

 基本的にマリエが魔物を倒しているお昼の間はフェーデが護衛として自分の隣に立つ。

 そして、マリエが魔物狩りから帰ってきた夕方からはフェーデが護衛の役目を彼女に任せ、皿洗い等に向かうこととなる。

 そんな形で僕の護衛は二人でローテーションされていた。


「……わかってますぅー」


 物語に出てくるような為政者としてのカッコいい仕事なんてまずない。

 基本的に僕たち当主の仕事は地味な各種調整だ。円滑な領地運営が出来るように様々な組織の間に入って潤滑油として働くのが僕の仕事である。

 当然、領地をこれからどうしていくかとかを決めるも当主の仕事ではあるけど、そんな目標とかはある程度最初のうちに建てたらもう数年は新しく考えたりしないからね。


「じみぃー」

 

 というわけで、当主の仕事は地味で面白味などほとんどないわけである。

 ずっとこれは疲れてくるし、飽きてくる。

 それでも重要なことだから、気を抜いては絶対に出来ないんだけど。


「皿洗いよりは良いだろう?」


「皿洗いの人を馬鹿にしないでくださいー」


「馬鹿にはしていないのじゃ!この星にある竜の中で、我こそが最も皿洗いに触れ、敬意を持っていることは確定じゃぞっ!じゃが、冷静に考えて皿洗いは当主よりも派手になることはないのじゃ!こればかりはどうしようもないただお事実であるのじゃ」

 

「……」


 ずいぶんと冷静な分析のようで。


「はぁー」


 僕はため息を吐きながら今、手元にある書類の決裁を終え、次の書類へと手を伸ばす。


「おっ?」


 次に手にとった書類。

 それは部下からの報告書であり、その報告書の表示には珍しく重要!とデカデカと書かれているようなものだった。


「何だろうか……?」


 地味だと不満を垂れていたところにやってきたイレギュラー。

 それにこれ以上ないほど顔をしかめた僕は嫌々ながらも報告書の方に目を通していく。


「……はぁ?革命だぁ?」


 嫌な予感を抱えながらも滑らせていた自分の視界に映ったもの。

 あまりにも驚愕の報告を前に、僕は驚きの声を漏らすのだった。

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