忠誠

 ディザイア様も私を捨てるのですか?


「ど、どういうこと?」


 そんなマリエの言葉に対して、僕は疑問の声を投げかける。


「ディザイア様がおっしゃったのですよ?」


 そんな僕に対して、マリエは無表情のまま、こちらとの距離を容赦なく詰めてゼロ距離としながら口を開く。


「私が自分の元から去るかもしれない、と。私の何が不満なのですか?何故、そんなことをおっしゃっるのですか?私はディザイア様の役に立っている。何故、私とディザイア様が離れ離れになる可能性をほのめかすのですか?何が足りないのですか?おっしゃってくれればディザイア様の命令であれば私は何でも……っ!」


「い、いや……別に、僕はマリエへの不満とかはないよ?」


「では、何故?」


「いや、僕がマリエにしてあげられたことなんてほとんどないし……ずっと、マリエが僕の隣にいてくれるかわからないでしょ?」


「いえっ!」


 困惑しながら告げる語る僕の発言の理由に対して、マリエは珍しく声を張り上げる。


「……っ」


「私はあの時の、ディザイア様の温かさに救われた気持ちとなったのです。ありとあらゆるものを信じられず、一人、血の池に沈んでいた私を救ってくれたのはディザイア様です。永久に、同じ時をお供いたします……ですから、どうかっ、私のことを捨てないでください……っ!」


「そ、そっか……そうかぁ、ありがとう。じゃあ、ずっと一緒にいようね」


「はい……っ」


 そこまで、慕ってくれているとは思っていないかった。

 マリエが、僕にずっと忠誠を誓ってくれるというのであれば、それを跳ねのける理由なんて存在しない。

 僕が死ぬまで、マリエがずっと見守ってくれると考えたらそれ以上に幸せで、心強いことはないよね……マリエはめちゃんこ美人さんだし。いや、でも、マリエを基準として僕が考えるようになっちゃったら、自分の基準がバグってもう誰も婚約者に取れなく……っ。


「待つのじゃっ!」


 なんてことを僕が考えていた時、この場にフェーデも窓をかち破ってど派手に登場する。


「我も永久に一緒じゃぞ!?」


 そして、そんなフェーデが口にするのはマリエと同じことであった。


「いや……フェーデは本当に何で。いや、いいや。フェーデもありがとう。ずっと一緒にいようねっ」


「うむっ!」


「……ちっ」


 マリエしかり、フェーデしかり、思ったよりも僕って、ちゃんと慕われているのかも?

 ふふっ、それなら嬉しいけどね。


「じゃあ、これからもよろしくね」


「はい」


「うむっ!」


 当主になることが確定した僕は改めて、ここまで自分を支えてくれた二人へと笑顔で言葉を告げるのだった。

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