謁見

 王都を観光した後、僕はそのままマリエとフェーデの二人を連れて我が国の国王陛下へと謁見していた。


「うむ……まさか、竜を手名付けるものがいるとは」


 信じらないくらい多くの護衛が押しかけている玉座の間で、僕は二人と共に頭を垂れて片膝をついた状態で国王陛下の話を聞き続けていた。


「それが我が国の貴族とはなかなかであるな……して、その竜は本物であるのか?」


 自分の前にいる国王陛下は何処までも上からな目線で僕たちへの言葉を口にする……正気か?この国王。

 いくら何でも竜であるフェーデを相手にその態度は問題なんじゃ……あれ?うちの国の王って賢王設定だったよね?


「男爵家の当主風情が制御できる竜など……本物なのか?それっぽく見せているだけだったりしないだろうか?たとえ本物の竜だとしても、その実力は如何ほどなのかね?」


 そんな僕の危惧を逆なでするように、国王陛下はなおも煽りの言葉を続ける。


「……ッ」


「おいっ」


 そして、案の定。

 そんな国王陛下の態度はフェーデの逆鱗を踏み抜き、彼女を怒らせる結果となってしまった。


「おぬし、何を言った?」


 いきり立って憤怒の声を漏らすフェーデは国王陛下を真正面から睨めつけに行ってしまう。


「フェーデ」


 そんな中で、僕は慌てながら、それを表には出さぬままに非難の意味を込めてフェーデの名を呼ぶ。

 

「こればかりはいくら、ディザイアの言葉であっても容易には頷けない。我の宝物であるお前が軽んじられ、黙ってはおれぬっ!あいつはディザイアのことを男爵家の当主風情などと宣ったのだぞ!」

 

 僕が侮辱されたことに対して、フェーデは怒りの声を上げてくれる。


「フェーデ」


 だが、それに対して、僕は更に語気を強くしてフェーデの名を強く呼ぶと共に鋭い視線を彼女へと向ける。

 自分の為に怒ってくれるのは嬉しいが、それはマジで今じゃない。

 

「んぐっ」


「座れ」


 マジで座って。

 この場で竜の暴走する可能性があることを見せるのは非常にまずい。

 僕はあくまで穏便に、自分が当主であることを国王陛下に認めてもらえれらば満足であり、既にそれは達成している。もうあとはこのまま何事もなく帰りたいのだ。


「……承知した」


 そんな僕の祈りが届き、フェーデは大人しく座ってくれる。


「お見苦しい真似をお見せしました。申し訳ございません」


 それを受け、僕は国王陛下の方に謝罪の言葉を口にする。


「う、うむ……別に構わぬ。許そう。男爵家の当主よ」


 そんな僕の謝罪を受け、国王陛下は特にお咎めの言葉を告げるのではなく頷いて許してくれるのだった。

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