王都
長い長い挨拶周り。
その最後に自分がやってくるのは王都である。
フェーデ関連で、国王陛下から呼ばれている僕はロロノア男爵領からは遠く離れた王都へとわざわざやってきていた。
「んー、美味しっ」
だが、その前に僕は王都で観光を楽しんでいた。
僕はマリエとフェーデの二人と、露店で買った串焼きを頬張りながら、王都を歩いていた。
「二人も何か買ったら?」
そんな中、僕の両端を陣取りながら、何も買おうとしないマリエとフェーデに声をかける。
「いえ、私はディザイア様の幸せそうな表情を見るだけで満足ですから」
「うむ。我もお前の輝く表情を見るだけで満足である!」
だが、二人の物欲は死んでいるのか、何かを買おうとはしなかった。
「うぅん……ずっと見られているのも困るんだけどぉ」
そんな二人に対し、僕はモグモグと串焼きを頬張りながら苦笑を浮かべる。
まぁ、二人は基本的にご飯とか食べないからなぁ。長命種であるエルフも、竜も燃費が良いのだ。
「んっ、じゃあさ」
串焼きを食べ終えた僕は一つの露店の方に寄っていく。
「せっかく王都に来たわけだし、三人で何かを買おうよ」
自分がすり寄っていった露店。
それは装飾品店だった。
「……二人からしてみれば、僕が出せる金で買えるものなどたかが知れていると思うけどぉ」
「いえ、買いましょう。何でもいいです。ディザイア様から頂きたいです」
「いや!実に素晴らしいじゃないか!」
「そう?」
僕はかなりオーバーに喜んでくれる二人を前に疑問の声を返しながら、それでも、ちょっとだけ鼻が高くなる。おべっかかもしれないけど……美人さん二人にそう言われるのは素直に嬉しい。
「じゃあ、何にしようか……イヤリングでも買う?」
「指輪が良いです」
「指輪じゃな」
「あっ、そう」
何を選ぶか悩んでいた僕に対して、二人は爆速で答えてくる。
「んー、それじゃあ、指輪を選んでいこうか。僕が選んでいい?」
「えぇ、お願いします」
「我に似合うのを頼むのじゃ!」
装飾品店に並ぶ大量の指輪を前に僕はみんなに似合いそうなものを選んでいく。
「宝石の色はぁ、マリエは緑で、フェーデは青かなぁ……僕は白にしよ。やっぱりエルフだから自然な、いや、こっちの剣っぽいのにしよ。フェーデは炎だよね!僕は無地でいいや」
色々と悩んだ末、僕は三つの指輪をチョイスする。
「どう?二人は」
「えぇ、実に素晴らしいです……ありがとうございます」
「おぉ、我の財宝が増えたな!」
いや、竜の財宝には絶対に並べないよ?
「二人が喜んでくれたならよかった」
オーバーに喜びすぎじゃ……なんてことも考えながら、それでも喜んでいる二人の様子を見て、僕は満足げに口を開くのだった。
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