あいさつ回り
当主になる。
そう誓ってからの僕の動きはかなり早く、自分の領地の周りにある貴族家へのあいさつ回りは早々に終わらせていた。
彼らとはフェーデ関連で既にあっているので、あいさつ回り自体はスムーズに終わった。
ちなみに、彼らへのおみやげとしてフェーデの鱗をプレゼントしたら大喜びされ、僕の当主引継ぎを歓迎すると言ってくれた。
「おー、これが竜の鱗か。実に美しいな……これは素晴らしい」
そして、それは男爵家だけではなく、ローアロス伯爵閣下にまで届いていた。
「そう言っていただけるのならよかったです」
「あぁ、これは満足以外の何物でもない……まさか長年、我が領地の頭痛の種として存在していた竜により、私が満足させられることになるとは思わなかったがな。今はあの竜、どうなっている?」
「大人しいものですよ。ここ最近のフェーデは温泉の方でゆっくりと浸かり、観光客に対して友好的な態度を見せた後は屋敷の方に戻ってきて、皿洗いに勤しんでいますよ。実に助かってますね」
どうなっているのか。
それを尋ねられた僕の答え。
「えっ?皿洗いしてんの?竜が?」
それを聞いたローアロス伯爵閣下が思わず素で驚き、ぽかんとした態度を見せてくる。
「えぇ、基本的にフェーデは自分の言うことに従ってくれますので」
「おぉ……凄い話だな。本当に。それで、今日は自分が当主になるという旨の挨拶であったな?」
「えぇ、その通りです」
「……実をいうと、お前の弟の母であるカターシャの実家であるミリスタ子爵家の方からうちの孫をよろしく頼むという話を受けていてな」
「……ッ」
「お前が死ねば、竜はどうなる?」
「わかりません。ですが、剣聖であるマリエに関しては絶対に復讐するという強い決意の胸を聞いてますね。おそらくは、マリエに追従するのではないでしょうか?それでも、ご安心を。自分が当主の座を追われた場合は彼女たちが復讐に走らないよう、全力で逃げますので。そうなったら後は僕がマリエとフェーデと共に流浪の旅にでも出ますよ」
「後者であっても問題よ。剣聖と竜を連れた少年の珍道中など怖くてしゃぁないわ」
「それもそうですが、国が滅ぶよりマシでしょう?」
「実に恐ろしい話だ。竜だけならともかく、剣聖までいるとなれば頭が本気で痛くなってくる。普通に国へと修復不可能なダメージを負わされ、そのまま周りの国のカモにされかねん。この時点でもうお前を当主と認めるほかないだろうな」
「脅しているつもりはございませんよ」
「少し考えればわかることを脅しとは言わぬさ。それと、この後は剣聖の伝手で侯爵の方々にも挨拶しに行くのだろう?」
「フェーデ関連で国王陛下にも謁見させてもらいます」
「オーバーキルじゃろう。子爵如きでどうこうなる話ではないわ、もう」
うん、僕もそう思う。
マジでオーバーキル。
「それでは、今後ともよろしくお願いします」
「あぁ、近隣としてよろしく頼む」
そんなことを考えながら、僕はローアロス伯爵閣下への挨拶を終わらせるのだった。
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