方針

 僕は当主になる。

 そう宣言してから、僕は早速とばかりに動き出していた。


「とうとう当主になる決意を固めたのね、ディザイアは!」


「そうだね……」


 まだ、この世界へと完全に順応出来たとは言えない。

 それでも、この世界に向き合う心構えは、覚悟は出来た。

 僕は自分の弟を敵へと回すことになったとしても、自分の領民の為にと思う。その覚悟は出来た。

 ただ、アイスをぶつけただけの少女を殺そうとする人間に、うちの領民たちを託すことは出来ない。


「それで?これからはどうするの?」


「あいさつ回りだな。父上を埋めるのは49日経ってからだ。つまり、正式な後継を立てるまでにそれだけの時間がある。ここで自分の立場を確固たるものにしないと」


 貴族の立場というのは、その他の貴族からどれだけの支持を集められているかに寄ってくる。

 この49日の間にどれだけの貴族に会えるかがかかっている……王侯貴族と言った上の方々ならともかくとして、男爵家は中々その他の貴族に会うことは出来ない。

 下手したら、同じ男爵家以外の貴族家の当主に会えない男爵家の当主だっているくらいだ。

 わざわざ男爵家の為に時を割いてくれる貴族はあまりいないのだ。

 結局のところ、未だにこの国は中央集権が強い絶対王政ではなく、各々の貴族が自領を己の国として考えているような貴族主義の国なのである。


「あいさつ回りか!人間たちはそればかりだな」


「どこに行くのですか?」


「既に自領の周りであれば、もう関わったことがあるような人たちばかりだからね。まずはそこら辺の人にあいさつ回りをした後……君たち二人やクエルポ商会を頼ろうかと」


「私のコネ、ですか……」


「剣聖の名で会えるような貴族家っていないかな?」


「多分、あると思いますね。了承したことはありませんが、私の剣の腕を見たいと仰ってくれている貴族の方もおりまして。そこを辿っていけば多くの貴族の方にも会えるかと」


「おー、助かるわ!」


 僕がマリエに対して、お礼の言葉を告げる中で。


「わ、我に人とのコネクションなどないぞっ!?て、手助け出来ぬ……!」


 フェーデの方が大きく頭を抱え始める。


「いや、フェーデはもう十分かな」


 そんなフェーデに対し、僕は優しく声をかける。


「えっ?」


「フェーデ関連で王家の方々が会いたいという申し出を自分にしてくれていて……それでもう十分だよ」


 フェーデのコネ。

 というよりも、竜という生命の希少性。

 それの強みについて僕はしたり顔で語っていくのだった。

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