抗議
僕は何を望んでいるのだろうか。
この命の軽い世界には慣れていない。
「貴方ッ!うちの息子を牢屋へと送るなんて……一体何を考えているの!?」
「……」
ゆえに、僕はカルロを初めとする自分の弟たちの陣営と事を構えたくはない。
「まさか庶子との諍いで私の息子を投獄するなど、許せるはずがない!どう責任をとるつもり!?」
「落ち着いてください。叫ばなくとも聞こえています」
「叫ばせているのは貴方よっ!」
だが、カルロの陣営と事を構えたくはないという自分の弱さ。
覚悟の足りなさにより、民への不寛容を掲げるカルロを当主としていいのか。
カルロの圧政により、生まれるかもしれない民は、自分が直接手を染めていないからと言って、見なかったふりをしていいのか。
自分は悪くないと、そう言い聞かせるんで、僕は本当にいいのか。
それで、僕は満足できるのか。
領民を見捨てて、それでいいのか。
「まずは、早く私の息子を開放しなさいよ!」
……。
…………。
「ふぅー」
僕は息を吐き、ゆっくりと足を組む。
「悪いけど、拘束は解除しないよ」
「……ッ」
そして、僕は毅然とした態度で自分の前で喚くカターシャへと言い放つ。
「わ、私にたてついて……どうなるかわかっているの!?」
「さほど問題にならぬことだけはわかるさ」
「問題にならないですって!?私は子爵家の娘なのよ!私が実家に掛け合いさえすれば……!」
「するならお好きにどうぞ」
「んなっ……!?」
「ロロノア男爵家の当主はこの僕だ。父上の意向より当主代行として数年、当主として働いていた自分が正式に父上の埋葬の後、当主となる。これは当主代行としての決定だ。変わることはない」
「お前のような下賤な娘の子供に何が出来る」
「軽んじるならどうぞ。ただ、生まれたことを後悔することになるだけだ」
「な、生意気な口を……っ!」
「それはこちらのセリフである。ただの第二夫人が当主代行たる自分に何たる口の利き方か」
「んなっ!?」
「さっさと退出したまえ。僕は当主を継ぐための準備があるのでな」
「覚えておきなさいっ!餓鬼に現実を見させてやるわ!」
僕の言葉をすべて受け取ったカターシャはこれ以上ないほどに表情を歪ませた後に言葉を吐き捨て、そのまま部屋を立ち去っていく。
「……マリエ」
カターシャが退出したこの部屋で、僕は自分の傍に仕えるマリエの名を呼ぶ。
「フェーデを呼んできてくれ。僕が当主になる」
「かしこまりました」
そして、僕は己が当主になると宣言してみせるのだった。
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