経過
死にかけの領地を盛り上げ、自分の死亡エンドを遠ざける。
剣聖と竜を仲間に出来た時点で成功しているような気がしなくないが、それでも、貴族として生まれたからには領民の為に行動するべき。
そんな思いから一生懸命やってきた領地改革は徐々に身を結んでいた。
「フェーデってば凄いなぁ」
半年くらいかけて作り上げ、一か月前にオープンした我が領地のフェーデの残り湯つき温泉街は圧倒的な売り上げを叩きだしていた。
竜の魔力が解けだした温泉というのは思ったよりも金持ちの目を引いてくれた。
「ふへへへ」
これによって金が落ちるだけではなく、雇用も生まれたのでもう本当に良いことしかない。
「そうじゃろう?そうじゃろう?我は凄いのじゃ!」
うっきうきな僕が告げる言葉を聞くフェーデは上機嫌に胸を張りながら答える。
「うん、本当にありがとー!」
「うぅーん」
僕はそんなフェーデの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ディザイア様。私を中心とした武芸大会等を開くのはどうでしょうか?自分の剣聖としての名声は世界に届くほど。きっと、素晴らしい催しになると思いますが」
自分の左後ろに立っているフェーデの頭を僕が撫でていると、右後ろの方に立っているマリエが自分に一つの提案を持ち掛けてくる。
「おっと!どっかの草が嫉妬しているのを感じられるのぅ!」
「いや、ごめん……それはちょっと」
「……ぐぬ」
「これは我の勝ちかのぅ!」
「いや、あの、ほら、別に僕だってずっと生きていられるわけじゃないんだしさー」
マリエも、フェーデも、ずっとこの領地にいるわけじゃないだろう。
彼女たちの名声だけに頼りすぎての領地運営は健全とは言えないだろう。
竜の場合は伝説として残すだけでかなりの価値がありそうだから、お願いしたけど。
「「……ッ」」
「僕にとっての始まりはマリエだから、変に煽っているフェーデのことは気にしなくていいよ」
僕がマリエに対して、嫉妬しないように言いながら自分の視線を領地からあげられてくる報告書の方に戻る。
ちょうどそんな時、自分の執務室の扉のノックされる音が響いてくる。
「んっ?どうぞ」
基本的にノックされることのない執務室の扉。
それがノックされたことに驚きつつも、僕は入室の許可を出す。
「失礼いたします」
「あぁ……爺やか」
それで、執務室の中へと入ってきたの燕尾服を来た一人の初老の男だった。
彼は古くからロロノア男爵家に仕えてくれている忠臣であり、うちが抱えている唯一の使用人である。
「何のようだい?」
普段は家の管理を行ってくれている爺やへと僕は疑問の声を投げかける。
「えっ……?父上が死んだ?」
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