名声

 なんやかんやあって僕が竜であるフェーデを受け入れ、それに慣れてしまってからしばし。


「どういうこと……?」


 竜を受け入れた我が家を周りがどう思っているか。

 それを部下に調べさせていた僕はそこから上がってきた報告に首をかしげる。


「何がどうなったらこうなるの?いや、マジで」


 自分の元にやってきた報告書。

 そこにはディザイアが竜をフルボッコにして自分の配下にしただの、ディザイアが竜を支配した救国の英雄だの、何だの、なんか知らんけどありえんくらい僕の過剰評価が世に浸透しているようだった。


「本気で意味が分からない」


 そんな評価に僕は首をかしげる。

 何をどうしたら、僕の評価がそんなことになるんだ?

 そんな、本気で意味のわからない過剰評価は困るんだけど……。


「僕ってば、たとえ、前世の知識があったとしてもただの凡人なんだけどなぁ。特に戦闘面に関しては雑魚も雑魚よ?ゴブリンにさえ、負ける自信が僕にはあるよ」

 

 フェーデが僕の元にやってきたのは瞳が綺麗だった、という面食いレベル100みたいな信じられない理由だよ?何でそれが僕の英雄譚にすり替わっているというのか。

 まるで理解できない。


「んー、まぁ、でも、見なかったことにしておこう」


 とはいえ、だ。

 だからと言って、僕にできることはない。


「どうせ、すぐに忘れられるか」


 僕の家の領地が目立つことなんて早々ない。

 一年もしないうちにみんなの記憶からなくなってくれることだろう、きっと。

 今までうちの領地が話題になるのは常に負の方向でのものだったし、それらを僕がしっかりと減らしていければ領地が話題になることもなくなる。


「そんなことより、だ」


 僕が考えるべきなのはそれよりも、フェーデがうちに来てしまったことによって、結局のところ一切減らなくなってしまった自分の宝物類である。

 今もなお、うちにはパンパンの宝石やら絵などの芸術品が大量に保管されている。

 その維持費も馬鹿にはならない。

 さっさと売りつけなければならないだろう……。


「何とか、販売相手を見つけないとなぁ」


 だが、だ。

 そのあてを既に僕は幾つか見繕っていた。


「でも……今の僕には頼もしい二人がいるからなぁ。きっと、うまく行ってくれるはず」


 魔物狩りの為に出かけているマリエと、キッチンで皿洗いをしているフェーデのことを思い浮かべながら、僕はある人物の行動日程を眺める。

 自分に足りない名声や威圧感など、よそから勝手にもってきてしまえば一瞬で解決なのである。

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