日々
ローアロス伯爵閣下の元で眠っていたのが起きてしまった一体の竜。
それを何の因果かうちで引き取ることになってしまったときより早いことでもう一週間。
「フェーデっ!!!」
「な、なんじゃっ!?」
「お前っ!またうちの使用人を困らせたな!」
「べ、別に良いではないか!我はちょうど肩を揉んでくれる人が欲しかったのじゃ!」
「お前、別に肩は凝らないだろっ!」
「それでも気持ちいいのじゃ!」
「だとしても、使用人を使うな。彼にも彼の仕事があるんだよっ!」
もうこの段階になった僕は色々と吹っ切れて普通に竜を相手にも怒鳴れるようになっていた。
「ただでさえ、僕のところは使用人の数も少ないんだからっ!一応は貴族なのに使用人の数が一人だよっ!?たった一人の使用人をお前の肩こりの為に使っている暇はないんだよ!次やったら、追い出すからねっ!」
「むぅ……わかったのじゃ。それじゃあ、その代わりに何じゃ。おぬしの顔をしばらく眺めていてもよいか?」
「馬鹿っ!僕も普通にお仕事があるのぉ!」
「何でじゃっ!意地悪っ!」
「働けっ!」
「ひどいっ!?」
「当然のことだが?働かざるもの食うべからず!」
「我は何も食うとらん」
「うるさいっ!」
「シンプルっ!?」
僕は竜であるフェーデを相手に一歩も引くことはなく言い合いを繰り広げる。
「ふっ」
そんな中において、魔物を狩っているとき以外は基本的に護衛役として自分の隣に居座っているマリエがフェーデを見て不敵な笑みを浮かべる。
「ぐなぁー!貴様っ!?今、我を笑いおったなっ!決して許さぬぞ!我も共に行かせよ!」
「なら、働けよ」
僕は悔しそうにつぶやくフェーデに対して、辛辣な答えを叩きつける。
「じゃ、じゃあ、我に何を望む!?何でもやってやるぞ!この竜たる我がなっ!」
「……うーん」
僕はフェーデの言葉に悩ましい声を上げる。
ぶっちゃけ、実力者枠で言えばマリエだけでいいのだ。
ここでフェーデもマリエと一緒に放ったら、うちの領地の魔物は狩りつくされてしまうだろう……魔物を狩り尽くす、というのも色々と問題があるんだよなぁ。
「悩まれるっ!?」
「いやぁー」
過剰戦力なのだ、竜は。あまりにも。
うちのようなちっぽけで竜に何かを頼むなど、草野球の助っ人に大〇翔平選手を呼ぶようなものなのだ。環境破壊待ったなし。
「……屋敷の、掃除?」
悩んだ末、フェーデに頼めそうなものはうちの屋敷の掃除くらいだった。
「それを竜たる我に頼むかっ!?」
「いやぁー」
「ええか?我がこの屋敷をピカピカにして見せるが故、必ず我も重用するのだぞ!」
「うん。それは約束するよ」
「では、行ってくるのじゃー!」
それでも、フェーデは僕の屋敷の掃除に向かってくれるのだった。
「約束してしまうのですか?ディザイア様。あいつくらい私が殺しますよ?」
「いや、それは辞めてね?本気で」
それにしても、何でこんなにもマリエはフェーデに対して好戦的なの?
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