結果

 半ば反射的にマリエと竜の間に割り込んでいった僕。


「どうしたのじゃ?童、そういきり立って出てくるものじゃないわ」


「いかがなさいましたか?ディザイア様」


 そんな僕のことを両端からマリエと竜の二人が抱き寄せてくる。

 

「あわわ」


 結果的に、美人さん二人からサンドイッチされるような形になった僕は今の状況も忘れてまた、頬を赤くする。

 いや、これは男であるならば仕方ないことだと思う。


「いや……ここで戦うのは流石にまずい、かな?って」


 そんな中でも、僕はしっかりと自分の意思を伝えていく。

 

「童が言うのなら従ってやるのじゃ」


「……承知いたしました」


 そんな僕の言葉を受けて、ようやく二人は殺意を出すのを辞めてくれる。

 ただ、二人で僕のことをサンドイッチするのは辞めてくれなかった。


「よっと」


「「……あっ」」


 これ以上美人さん二人にサンドイッチされているのは僕の心臓が限界を迎えてしまうので、自分から脱出する。


「えーっと、で?これは一体どうなったの?」

 

 最終的な決着点は何処についたのだろうか?


「おー、そうじゃった。そうじゃった。伯爵の」


 そんな僕の疑問へと答えるように頷いた竜はローアロス伯爵閣下の方に声をかける。


「な、なんでしょう……?」


「ここまで集めてもらったところ悪いが、我はこやつの瞳を気に入った。我への貢ぎ物はこれで良い」


「えっ……?」


 僕が貢ぎ物になったの?僕は物扱いですか?


「我はしばらく巣を離れ、童と行動を共にする。巣に行かぬゆえ、宝物も必要ではなくなってしもうた」


「はぁ?そんなこと、私が許すわけない」


「ほう?エルフの娘如きに何が出来るのじゃ?」


「んっ?いや、ちょっと待って?ん……?話をまとめさせて?」


 僕は再びにらみ合いを始めたマリエと竜の話に割り込んでいく、。

 

「何じゃ?童」


「つまるところ、竜は僕のことが気に入ったから、自分と行動を共にするということ?」


「そういうことじゃな」


「僕の家って竜を飼えるほど裕福じゃないんだけど……まずは領民を飢えさせないことから始めなきゃいけないのに」


 竜の巨体を維持させられるだけの栄養素をうちじゃ当てられないし、まず飼えないけど……?いきなり僕と一緒に来るなんて言われても困るというか、何というか。


「それならば、何の心配もない。我は飯などなくとも生きていられるゆえにな」


「あっ、なら、良かった……」


 いや、良かったのか?


「えーっと、それじゃあ、これから竜は僕の家に、来ると」


「我の名前はフェーデじゃ。そう他人行儀で呼ぶでない」


「あぁ……ごめん。フェーデ」


「うむ。それでいいのじゃ。これからよろしく頼むぞ」


「えぇ……」


 僕はフェーデの言葉に困惑しながら、視線をローアロス伯爵閣下の方に向ける。


「……」


 彼はこちらに任せたと言わんばかりの視線を浮かべていた……なるほど。

 僕の領地に剣聖と竜が集まるわけか……もうこれ。自分が断罪されることに対して、震えるのが馬鹿らしくなるほどの過剰戦力なんじゃない?

 まぁ、竜は僕の瞳が綺麗だからというアホみたいな理由でついてくると言っているから、あまり信用にはおけないけどぉ……。


「……うん、わかった。これからよろしくね」


 とりあえずは、だ。

 この場を丸く収めるには一旦、うちの領地の方でフェーデを預かるのが良いだろう。いざという時にはマリエもいるし。


「ディザイア様っ!?」


「うむ。よろしく頼むじゃっ!」


 半ば、諦めの感情も伴いながらの僕の言葉に対し、フェーデは実に満足そうな笑みで頷くのだった。

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