自分たちが馬車で持ってきたものを含め、続々と集められている宝物たち。


「おぉー」

 

 それを眺める僕は感嘆の声を漏らす。

 大量に並べられている宝物の数々。大量に持って来たうちの宝物類すらも霞むほどの量を集めていた……よくもまぁ、こんなに集めたところだ。

 寄付されるのなんて本当に少量だろうし……これは、流石の伯爵家の底力ということだろうか?


「凄まじいね……ここまでの宝石類を見るのは初めてかもしれません」


 そして、そんな僕の隣でマリエも同じように感嘆していた。


「へぇー、マリエでも……あれ?でもさ、マリエって竜を殺したんだよね?そいつがため込んでいた宝石類とかの方が多いじゃないの?」


「私が竜を殺しは大規模な軍事作戦だったんですよ。まずは世界各国の兵士たちが竜のねぐらを強襲。その次に有名どころの実力者。そして、最後に私とその他、二人の本当に選ばれたメンバーで倒した。という形ですので。私が竜のねぐらを強襲した時には既にもう彼の持つ宝石類はすべて消し飛んでいる、と言ってもいいような状況だったんです」


「なるほどね」


 マリエの説明に僕は頷く。

 流石に、竜殺しをたった一人で成し遂げるのは無理だよね。


「とはいえ、私の前に突入した連中は竜を相手に少しも攻撃を加えることは出来ていませんでしたし、私と共にいた二人もあまり役には立たなかったので、実質的には私一人で殺したようなものですが」

 

 ……あっ、そすか。


「それでも、今回は私の出番なさそうでよかったですけど。宝物で満足するでしょう」


「それで済むなら最高だよね」


「それに、ディザイア様もついているのだから何の問題もありません」


「……そっすね」


 ……いや、どういう評価?

 僕は何かずいぶんと過分な気がするマリエに対して、ちょっとだけ引きながらも、それでも失望されたくはないので黙っておく。

 藪蛇をつつきたくはない。

 そんな話を僕がマリエとしていた時。


「……来ました」


 急にマリエがぼそりと何かを呟く。


「えっ?」


 それに対して、僕は疑問の声をぶつける。


「わ、わぁぁ」


 だが、そんな僕の疑問はすぐに解消された。

 遥か上空よりバサバサというこの場、全体を震わせるような音に空気感が吹き荒れ、ゆっくりと天空の方から一つの怪物が下りてくる。

 光沢のあるうろこに覆われたあまりにも大きすぎる巨体に、随分とごつい顔、そして、天空を支配する威容のある翼。


「あ……ぁ」


 僕の体は自ずと震えてくる。

 自分の前に現れた圧倒的な上位種を前に。


「竜だァーッ!?」


 僕は唐突に現れた絶対的な上位種を前に、大きな悲鳴をあげるのだった。

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