第5話 オルカショーの方針を巡り、水原とサツキは対立

 ある日、事務所で宣伝用のポスターが大量に作成されているのが見つかった。

 ポスターには『市原オーシャンマーメイズ』との表記とともに3人の新人の写真が掲載されていた。驚くサツキ。そのうちの1枚を手に取り水原の元に向かった。

「失礼します。サツキです」

「はい、どうぞ」

 ドアの内側から声がすると同時ぐらいのタイミングでサツキは水原の部屋に突入。ポスターを机の上にたたきつけた。

「現場のリーダーを飛び越えて、こんなことしていいと思ってるんですか?」

 ソフトクリームを食べながら水原が応じた。

「んー。君は広報部長でもないのに何を言ってるのかね?一応現場の意見も聞いておこうと思うけど、いったい、何が気に入らないのかね?」

「熟練度が足りません。まだ、オルカが本来は怖い生き物だということがしっかりと理解できていないんじゃないかと」

「んー、恐怖なんて話をしたら、ショービジネスなんて成り立たないんじゃないのかね?それに、恐怖心のない新人の方がのびのびと演技できると思うんだけど」

 水原は空になったソフトクリームの容器を握りつぶして話を続けた。

「これは慈善事業ではないんですよ。お金を出すお客さんがいて、ショーが成り立つんですよ」

 机の上に、融資計画書のドラフトが無造作に置かれているのが見えた。

「安全確保の責任者は私です」

「そんな考えではショーは成立しませんよ」

 オルカショーの方針を巡り、水原とサツキは対立していた。


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