第五章:吉野の山、最後の戦い 第5話:月白の真の姿

 開発業者との対立が極限に達した時、予想外の事態が起こった。

 月白の体から、今までにない強い光が放たれ始めたのだ。


 「月白...?」幸明は驚きの声を上げた。


 光は次第に強くなり、月白の姿が変化し始めた。

 その姿は大きくなり、より神々しいものへと変わっていった。

 村人たちは畏怖の念に包まれ、身動きができなくなった。


 光が収まると、そこには巨大な白狼の姿があった。

 その姿は、まるで伝説の中の神獣のようだった。


 月白は低く、しかし力強く鳴いた。

 その声は山全体に響き渡り、木々や岩までもが共鳴するかのようだった。


 幸明は月白の目を見つめた。

 そこには、これまで以上の知恵と力が宿っているのが分かった。


 「月白...これが君の真の姿なんだね」


 月白は頷くように首を動かした。


 突然、月白は山頂へと駆け上がった。

 その姿は瞬く間に消えたが、山全体が光に包まれるのが見えた。


 村人たちは言葉を失った。

 開発業者たちさえも、この光景に圧倒されていた。


 幸明は静かに語りかけた。

 「皆さん、これが私たちの山の真の姿です。この神聖な場所を、私たちの手で守っていかなければなりません」


 この出来事は、村人たちの心に大きな変化をもたらした。

 月白の真の姿を目にしたことで、多くの人々が山の持つ本当の価値を理解し始めたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る