第五章:吉野の山、最後の戦い 第4話:自然の力を借りて

開発業者との対立が深まる中、幸明と月白は新たな策を練ることにした。


 「月白、私たちには特別な力がある。その力を使って、みんなに自然の大切さを理解してもらおう」


 月白は同意するように鳴いた。


 二人は、村人たちを山の奥深くへと案内することにした。

 そこは、普段人が立ち入らない神聖な場所だった。


 山道を登りながら、幸明は村人たちに語りかけた。


 「よく見てください。この木々、この空気、この土...全てが生きているんです」


 月白が柔らかな光を放つと、不思議なことが起こり始めた。

 木々が優しく揺れ、小動物たちが姿を現し、まるで村人たちを歓迎しているかのようだった。


 村人たちは驚きの声を上げた。


 「こんな...こんな景色、見たことがない」

 「まるで、山が生きているみたいだ」


 幸明は続けた。

 「この山は、私たちの先祖から受け継いできた宝物です。開発してしまえば、二度と取り戻せません」


 突然、地面が小刻みに揺れ始めた。

 しかし、それは恐ろしいものではなく、まるで大地が鼓動しているかのようだった。


 「感じてください」幸明は静かに言った。

 「この山は、私たちに語りかけているんです」


 村人たちの表情が、少しずつ変わっていく。

 彼らの目に、理解と畏敬の念が宿り始めた。


 この体験は、村人たちの心に大きな影響を与えた。

 開発に賛成していた人々の中にも、迷いが生じ始めた。


 しかし、事態はまだ予断を許さない。

 開発業者は、さらに強引な手段に出ようとしていたのだ。


 幸明と月白の戦いは、まだ続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る