第五章:吉野の山、最後の戦い 第3話:説得と対立
翌日、幸明は村の集会所に全ての村人を集めた。月白も共にいる。
「皆さん」幸明は静かに、しかし力強く語り始めた。
「この山は、単なる自然ではありません。私たちの先祖から受け継いできた魂の故郷なのです」
幸明は、自身の旅で学んだこと、自然との共生がもたらす真の豊かさについて語った。
月白も時折、柔らかな光を放ち、村人たちの心に直接語りかけるようだった。
「確かに、開発は一時的な繁栄をもたらすかもしれません。
でも、それは本当の幸せでしょうか?」
幸明の言葉に、少しずつ村人たちの表情が変わっていく。
しかし、開発推進派の代表が立ち上がった。
「きれいごとを言っている場合か! 現実を見ろ。このままでは村が滅びるんだ!」
議論は白熱し、時に感情的になった。
幸明は冷静さを保とうと努めたが、状況は膠着状態に陥っていった。
そんな中、予期せぬ来訪者があった。
開発を主導する大企業の代表者だ。
「こんな議論は無意味だ。開発は既に決定事項だ。
抵抗する者には然るべき対応をする」
その強圧的な態度に、村人たちは戸惑いを隠せない。
幸明は決意を固めた。
「私たちは、決して諦めません。この山には、金では買えない価値があるのです」
対立は深まり、事態は新たな局面を迎えようとしていた。
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