第五章:吉野の山、最後の戦い 第2話:開発に揺れる村人たち

 幸明と月白は、村人たちとの対話を始めた。

 しかし、状況は彼らが想像していた以上に複雑だった。


 「幸明さん、私たちだって自然を大切にしたい。

 でも、このままじゃ村が衰退してしまうんです」若い農夫が訴えた。


 「そうだ。開発で雇用が生まれ、村に活気が戻るんだ」と、別の村人も同調した。


 幸明は村人たちの苦しい胸の内を理解しつつも、諦めなかった。


 「みなさん、確かに今は苦しいかもしれません。

 でも、この山を失ってしまえば、私たちの魂の拠り所まで失ってしまうのです」


 幸明は、自然との共生がもたらす恩恵について語り始めた。

 月白も、時折柔らかな光を放ち、村人たちの心に働きかけた。


 しかし、長年の苦しさや将来への不安は簡単には拭えない。

 村は二つに分かれ、激しい議論が続いた。


 その夜、幸明は月白と共に山頂に登った。友月の眠る場所の近くだ。


 「友月...私たちに力を貸してくれ」幸明は星空に向かって呟いた。


 突然、月白が強い光を放った。

 その光は山全体を包み込み、村人たちの心に何かを訴えかけているようだった。


 幸明は感じた。これが最後のチャンスかもしれないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る