第五章:吉野の山、最後の戦い 第1話:故郷の危機

 幸明と月白の旅が続く中、彼らは思いがけない知らせを受け取った。

 幸明の故郷である吉野の山が、大規模な開発計画の対象となっているというのだ。


 「そんな...」幸明は驚きの声を上げた。

 「吉野の山は、私たちの旅の原点だ。友月の眠る場所でもある」


 月白も不安そうに鳴いた。


 二人は迷うことなく、吉野の山へ向かうことを決意した。

 長い旅路の末、彼らがついに故郷に戻ってきたとき、そこには悲しい光景が広がっていた。


 山の裾野では、すでに開発の準備が始まっていた。重機が並び、木々が切り倒される音が響いていた。


 幸明は胸を痛めながら、かつての里を訪れた。

 そこで彼は、里の長老と再会した。


 「幸明...よく戻ってきてくれた」長老は悲しげな表情で語った。

 「我々にはもう力がない。若者たちは皆、開発に賛成なのだ」


 幸明は決意を固めた。

 「まだ諦めるには早いです。この山には、私たちが守るべき大切なものがあります」


 長老は幸明を見つめ、かすかな希望の光を見出したようだった。


 「幸明、お前にできることがあるなら...頼む、この山を救ってくれ」


 幸明は月白を見つめ、静かに頷いた。

 彼らの最後の、そして最大の戦いが始まろうとしていた。

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