第五章:吉野の山、最後の戦い 第6話:幸明、決断の時

 月白の真の姿を目にした後、村は大きく揺れ動いた。

 多くの村人たちが開発に反対の声を上げ始め、一方で開発業者たちはさらに強引な手段に出ようとしていた。


 そんな中、幸明は重大な決断を迫られていた。


 「幸明さん」村長が近づいてきた。

 「あなたの力がなければ、この山は守れません。

 どうか、私たちの代表として開発業者と交渉してください」


 幸明は深く息を吐いた。これまでの旅で学んだこと、月白との絆、そして友月の思い出。全てが彼の中で交錯していた。


 「分かりました」幸明は静かに答えた。「私にできることは全てやります」


 翌日、幸明は月白と共に開発業者との交渉の場に臨んだ。


 「この山には、金銭では測れない価値があります」幸明は力強く語った。

 「私たちの歴史、文化、そして魂そのものがこの山に宿っているのです」


 開発業者の代表は冷ややかな目で幸明を見た。

 「きれいごとを言っても、現実は変わらない。この開発は国策なのだ」


 しかし、幸明は諦めなかった。彼は自分たちの旅で見聞きしたこと、各地で起こっている自然との共生の取り組みについて語った。

 そして、月白の力を借りて、山の持つ神秘的な力を示してみせた。


 交渉は難航したが、幸明の熱意と月白の存在感が、少しずつ状況を動かし始めた。


 最後に幸明は言った。

 「もし、それでもこの山を開発するというのなら...私たちは命を賭けてでも守ります」


 その言葉に、会場は静まり返った。

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