第四章:真実の探求 第2話:月白の過去

 友月の墓を後にした幸明と月白は、静かな森の中で休息を取ることにした。

 夜空に満月が輝く中、幸明は月白と向き合って座った。


 「月白、君のことをもっと知りたい」幸明は静かに語りかけた。

 「君はどこから来たんだ?どうして特別な力を持っているんだ?」


 月白は幸明をじっと見つめ、そして突然、体から柔らかな光を放ち始めた。

 その光は幸明を包み込み、彼の意識は不思議な景色へと導かれた。


 幸明の目の前に広がったのは、遥か昔の森の風景だった。

 そこには、多くの動物たちが平和に暮らす姿があった。

 そして、その中心には一匹の白い狼がいた。


 「これは...月白の先祖?」幸明は驚きの声を上げた。


 光景は移り変わり、人間が森に入り込んでくる様子が見えた。

 最初は平和だった関係が、次第に対立へと変わっていく。


 そして、ある時代に一人の賢者が現れた。

 その賢者は動物たちと心を通わせ、人間と自然の調和を説いた。

 白い狼は、その賢者と深い絆を結んだ。


 「まるで...私と友月のようだ」幸明は呟いた。


 しかし、その調和も長くは続かなかった。

 再び対立が起こり、白い狼は力を使って人々を導こうとした。

 だが、その力は両刃の剣となり、狼自身も傷つき、森に姿を消した。


 最後の場面で、幸明は月白が生まれる瞬間を目にした。

 月白の体には、過去の白い狼たちの記憶と力が宿っていた。


 光が消え、幸明は現実に引き戻された。

 月白は疲れた様子で、幸明の膝に頭を乗せた。


 幸明は深く息を吐いた。

 「分かったよ、月白。君は単なる狼じゃない。君は、人間と自然の調和を守るための存在なんだね」


 月白は小さく鳴いて答えた。


 幸明は月白を優しく撫でながら、これからの道のりに思いを巡らせた。

 彼らの使命は、過去の過ちを繰り返さず、真の調和を実現すること。

 それは簡単ではないだろうが、二人ならきっとやり遂げられるはずだ。


 「さあ、行こう月白」幸明は立ち上がった。「私たちの本当の旅は、ここから始まるんだ」


 月明かりの下、幸明と月白は新たな決意と共に、次の目的地へと歩み出した。

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