第四章:真実の探求 第1話:友月の墓参り

 激しい戦いの末、幸明たちは何とか月白を救出することに成功した。

 しかし、その過程で多くの犠牲が出た。

 仲間たちの中にも負傷者がおり、幸明自身も心身ともに疲れ果てていた。


 救出後、幸明は月白を連れて静かな場所に身を隠した。

 そこで彼は、長い間温めていた決意を実行に移すことにした。


 「月白、友月の眠る場所に行こう」


 月白は静かに頷いた。


 二人は長い旅路の末、かつて友月を葬った吉野の山にたどり着いた。

 木々は青々と茂り、小鳥のさえずりが聞こえる。

 まるで20年前に戻ったかのような懐かしい光景だった。


 友月の墓前に立つと、幸明は深々と頭を下げた。


 「友月、久しぶりだ。こんな形での再会になってしまって申し訳ない」


 幸明は、これまでの旅路や月白との出会い、そして最近の出来事を静かに語り始めた。


 「月白の中に、君の魂の一部があるのかもしれない。

 でも、それ以上に大切なのは、君が私たちに教えてくれたことだ。

 人と自然が共に生きること、その大切さを」


 月白も静かに墓前に座り、低く鳴いた。


 幸明は続けた。

 「でも友月、私たちの旅はまだ終わっていない。むしろ、本当の意味での旅がこれから始まるのかもしれない」


 風が吹き、木々がざわめいた。

 まるで友月が応えているかのようだった。


 幸明は決意を新たにした。

 「必ず、君の遺志を継ぎ、人と自然が調和する世界を作り上げてみせる」


 墓前を離れる際、幸明は月白の頭を優しく撫でた。

 「さあ、行こう。私たちにはまだやるべきことがある」


 二人は静かに山を下り始めた。これからの道のりは険しいかもしれない。

 しかし、友月の墓参りを通じて、幸明は自分たちの使命を改めて強く感じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る