第一章 第6話:新たな力の目覚め

 幸明と月白が開墾地を後にして数日が経った頃、彼らは深い森の中で休息を取っていた。


 その夜、月白が突然身を起こし、耳をピンと立てた。


 「どうした、月白?」幸明が尋ねる。


 月白は森の奥を見つめ、低く唸った。

 幸明も注意深く耳を澄ませると、かすかに動物の悲鳴のような音が聞こえてきた。


 二人は音のする方向へと向かった。

 やがて、小さな空き地に辿り着くと、そこには罠にかかった鹿の姿があった。


 「あっ!」幸明は驚いて駆け寄った。


 鹿は恐怖に震えていたが、幸明と月白を見ると、不思議と落ち着きを取り戻したようだった。


 幸明が罠を外そうとしていると、月白が突然、鹿の傍らに座り、目を閉じた。


 「月白?」


 その瞬間、幸明の目の前で驚くべき光景が広がった。

 月白の体から淡い光が放たれ、その光が鹿を包み込んでいく。

 鹿の傷が、見る見るうちに癒えていったのだ。


 「こ、これは...」幸明は言葉を失った。


 光が消えると、鹿はゆっくりと立ち上がり、二人に向かって頭を下げるようにして、森の奥へと去っていった。


 月白は疲れた様子で幸明の元に戻ってきた。


 「月白、今のは一体...?」


 月白は小さく鳴き、幸明の手に顔をすりつけた。

 幸明には、月白が「自分にも分からない」と言っているように感じられた。


 幸明は月白を優しく撫でながら、深く考え込んだ。

 月白の中に眠っていた力が、今覚醒したのかもしれない。

 そして、その力は自然を癒し、生命を守るためのものなのではないか。


 「月白、君の中には特別な力が宿っているようだ」幸明は静かに語りかけた。

 「これからの旅で、その力の意味を一緒に探っていこう」


 月白は幸明を見上げ、力強く鳴いた。


 二人は再び眠りについたが、幸明の心の中には新たな希望が芽生えていた。

 月白の力が、これからの彼らの旅にどのような影響を与えるのか。

 そして、その力は世界にどのような変化をもたらすのか。


 夜明けとともに、幸明と月白の新たな冒険が始まろうとしていた。

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