第一章 第5話:変わりゆく世の中

 幸明と月白が里を後にして数日が経った頃、彼らは大きな変化に直面することになった。


 道中、彼らは次第に人々の往来が増えていることに気づいた。

 そして、ある日、彼らの目の前に予想外の光景が広がった。


 「これは...」幸明は言葉を失った。


 目の前には、広大な平野が開け、そこでは大規模な開墾作業が行われていた。

 多くの農民たちが、汗を流しながら木々を切り倒し、土地を耕している。


 幸明は近くにいた農民に声をかけた。

「すみません、ここで何が行われているのでしょうか?」


 農民は誇らしげに答えた。

 「新しい領主様の命令で、この土地を開墾しているんです。立派な田畑ができれば、みんなが豊かになれるんですよ」


 幸明は複雑な表情を浮かべた。

 確かに、人々の生活を豊かにすることは大切だ。

 しかし、このままでは自然が失われてしまう。


 月白も不安そうに辺りを見回している。


 幸明は農民たちに語りかけた。

 「自然を大切にしながら、人々の生活を豊かにする方法はないでしょうか?」


 しかし、多くの農民たちは首を傾げるだけだった。


 「自然? そんなこと言ってる場合じゃないですよ。私たちは生きていかなきゃならないんです」


 幸明は深いため息をついた。

 世の中は確実に変わりつつあった。

 人々の価値観も、20年前とは大きく異なっている。


 その夜、幸明は月白と共に小さな丘の上で夜空を見上げていた。


 「月白、私たちの使命はより困難になりそうだ」幸明は静かに語りかけた。

 「でも、だからこそ私たちの教えが必要なんだ」


 月白は幸明の手に顔をすりつけ、同意を示した。


 幸明は決意を新たにした。

 「よし、明日からは更に多くの人々と対話し、自然との調和の大切さを伝えていこう」


 星空の下、幸明と月白の新たな挑戦が始まろうとしていた。

 変わりゆく世の中で、彼らの教えがどのように受け入れられていくのか。

 その答えは、まだ誰にも分からなかった。

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