第一章 第2話:宗松上人との再会

 幸明と月白の旅が始まって約一ヶ月が経った頃、二人は小さな山寺にたどり着いた。

 苔むした石段を上がると、そこには懐かしい人物が立っていた。


 「おお、幸明か。よくぞ来てくれた」


 その声に、幸明の目が輝いた。


 「師匠! 宗松上人!」


 幸明は駆け寄り、深々と頭を下げた。月白も幸明の後に続き、丁寧にお辞儀をした。


 宗松上人は微笑みながら二人を見つめた。

 その姿は年老いてはいたが、目の輝きは20年前と変わらなかった。


 「ほう、これはまた珍しい連れ合いじゃな。この白狼は...」


 「はい、月白と名付けました。ある村で出会って...」


 幸明が説明しようとすると、宗松上人は手を上げて制した。


 「説明は中でゆっくりと。さあ、入りなさい」


 三人は山寺の一室に落ち着いた。幸明は旅の様子や月白との出会いについて語った。

 宗松上人は黙って聞いていたが、時折月白を見つめ、何かを考えているようだった。


 「なるほど。月白か...友月を思わせる名だな」


 宗松上人の言葉に、幸明は驚いた。


 「師匠、もしかして...」


 「うむ。この白狼には特別な力が宿っているようじゃ。

 友月の生まれ変わりかどうかは分からんが、何か重要な役割を担っているのは間違いない」


 月白は静かに宗松上人を見つめ、小さく鳴いた。


 「幸明よ、お前たちの旅は、これから大きな意味を持つことになるだろう。

 世の中は大きく変わろうとしている。

 その中で、人と自然の調和を説くお前たちの役割は重要じゃ」


 幸明は真剣な面持ちで頷いた。


 「はい、師匠。私たちにできることを、精一杯やっていきます」


 宗松上人は満足げに微笑んだ。


 「よい心がけじゃ。さあ、今夜はゆっくり休むがよい。明日からの旅に備えてな」


 幸明と月白は感謝の意を示し、用意された部屋に向かった。

 二人の心には、これからの旅への期待と不安が入り混じっていた。


 宗松上人との再会は、彼らの旅に新たな意味を与えたのだった。

 月白の存在の謎、そして彼らが担う使命。

 全てが少しずつ明らかになっていく予感が、静かな夜の空気の中に漂っていた。

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