第一章 第1話:月白との対話

 幸明と月白が出会ってから数日が過ぎた。

 二人は村を後にし、山道を進んでいた。

 幸明は時折月白に語りかけ、月白はそれに応えるように鳴いたり、身振りで反応したりしていた。


 「月白、君は本当に不思議な存在だな」


 幸明は月白の頭を優しく撫でながら言った。月白は気持ち良さそうに目を細める。


 「ぐるるっ」


 その鳴き声は、まるで言葉を交わしているかのようだった。

 幸明は、徐々に月白の意思を理解できるようになってきていた。


 「そういえば、友月との最初の頃を思い出すよ。あの時も、言葉を超えた対話があったんだ」


 幸明は懐かしそうに微笑んだ。

 月白は興味深そうに耳を立てる。


 「友月のことが知りたいのか? そうだな...」


 幸明は立ち止まり、近くの岩に腰を下ろした。月白も幸明の傍らに座る。


 「友月は、私の人生を変えてくれた存在だった。

 人間と動物が心を通わせ、共に生きることの素晴らしさを教えてくれたんだ」


 月白は真剣な眼差しで幸明の話に聞き入っている。


 「そして、友月との別れを通して、生と死の意味も学んだ。

 全ては循環している。死は終わりではなく、新たな始まりなのだと」


 幸明は月白の目をじっと見つめた。


 「月白、君は友月の生まれ変わりなのだろうか? それとも...」


 月白は小さく鳴き、幸明の手に鼻先を押し付けた。その仕草に、幸明は何か深い意味を感じ取った。


 「分かった。今はその答えを急ぐ必要はないんだね。

 大切なのは、今この瞬間、私たちが共に歩んでいるということか」


 幸明は立ち上がり、再び歩き始めた。月白も軽やかに後を追う。


 「さあ、行こう月白。私たちには、まだまだたくさんの人々と出会い、多くのことを学ぶ旅が待っているんだ」


 二人の姿が、夕陽に照らされた山道を進んでいく。

 新たな冒険の始まりを告げるかのように、風が心地よく吹き抜けていった。

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