プロローグ 第2話:白狼との出会い

 幸明が次に向かったのは、東国の山深い村だった。

 開発の波から取り残されたその村は、自然に囲まれながらも、厳しい生活を強いられていた。


 村に到着した幸明は、住民たちの話を熱心に聞いていた。


 「山の木を切って売るしか、生きる道がないんです...」


 老人の言葉に、幸明は深く頷いた。


 「分かります。しかし、山を大切にしながら生きる方法もあるはずです。一緒に考えてみませんか?」


 その日の夕方、幸明は村はずれの小川で瞑想をしていた。

水の音に耳を澄ませ、自然の声を聴こうとしていた時だった。


 「ガサッ」


 突然の物音に、幸明は目を開けた。そこには、一匹の白い狼が立っていた。


 「おや...?」


 幸明は驚きつつも、その場に留まった。

 白狼は警戒の色を見せず、むしろ好奇心に満ちた目で幸明を見つめていた。


 「ぐるっ...」


 低い鳴き声。それは20年前、友月が発していたものと酷似していた。


 「まさか...」


 幸明の心臓が高鳴った。この白狼の目には、どこか懐かしい光が宿っていた。

 友月の面影とも言えるその光に、幸明は言葉を失った。


 白狼はゆっくりと幸明に近づき、その手をそっと舐めた。


 「ああ...」


 幸明の目に涙が浮かんだ。20年前の記憶が鮮明によみがえる。


 「君は...友月なのか? それとも...」


 白狼は首を傾げ、幸明を見つめ続けた。

 その瞳には、人間のような知性が宿っているように見えた。


 「よし、分かった。君と一緒に旅をしよう。きっと、何かが見えてくるはずだ」


 幸明は静かに立ち上がった。白狼も同じように身を起こす。


 「君の名前は...そうだな、月白(つくしろ)。月の光のように白い毛並み、そして友月の面影を持つ君にぴったりだ」


 月白は嬉しそうに尻尾を振った。


 こうして、幸明と月白の新たな旅が始まった。

 二人の出会いが、これからの世界にどのような影響を与えるのか。

 それは誰にも分からない。

 ただ、何か大きな変化の予感だけが、夕暮れの空気の中に漂っていた。

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