23話 探索者ライセンス取得合宿(2)

プリントの内容をわかりやすく黒板に書きながら、紫之宮さんが説明をしていく。



「ダンジョン。公式には特殊建造物と呼ばれる建物は2032年1月1日午前9時に世界各国で出現した。現在、確認できているダンジョンだけでも800を超えている。うち14棟が日本で出現し、2棟は消滅した。ああ、プリントでは13になっている。14に直しておいてくれ」



あー、そうか。最近見つかった海中ダンジョンは含めるけど、あの女が完全攻略したと自己申告していた2つは含めないのか。


テストで出たら間違えそう。

気をつけよう。



「なぜダンジョンが出現したのか、ダンジョンが出現する場所の条件は何なのかわかっていない。ただ、人口の多い国の方がダンジョンの出現も多い傾向から、人口によって左右されているのではないかと言われている」



ダンジョンが出現する場所のダンジョンマスターが決めた場所である。

これがわかっていないってのは嘘では?


いや、そう教えるようになってるんだろうけどさ。


人口の多い国の方がダンジョンの出現も多いっていうのは俺も知らなかった。

実際はどうなのかあとでAIに聞いてみよう。



「また、ダンジョンの出現とともに聞こえた声についても謎が多い。どうやって声を届けたのか、声の主は誰なのか。一部では神の声とも呼ばれているが、テストでは天の声として扱われるから気をつけろよ」



プリントに人類が聞こえた声の全文が載っている。



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人類の皆様にお知らせです。

ただいまを持ちまして、ダンジョンが出現しました。

それによりステータスポイントの配布が行われます。

ステータスと唱えることで能力の設定が可能です。

己を鍛え、ダンジョンの侵略から地球を守りましょう。


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侵略から地球を守ろうとか言ってるけど、ダンジョンを用意させたのはお前だろって言いたくなるな。マッチポンプかよ。


この声が一体なんなのかは俺も気になるところだ。


以前、AIに聞いた時は現時点ではお答えできませんって言われた。現時点ではってことは、そのうち知れる可能性はある。



「ダンジョンの地上に出ている部分の大きさは様々だが、四角く、石造りである事が多い。中に入ってスキルを使えたらダンジョン確定だな。政府が認定していないダンジョンを見つけた場合はすぐに防衛省の特殊建造物対策局に連絡してくれ。面倒なら警察でもいい」



ここら辺めっちゃテストに出そう。プリントにメモっておこ。


よっぽどの辺境に作らない限りは日本だとすぐにダンジョンが見つかると思うけど、どうなんだろう。

実は山の中にありました、みたいなのがあったりするのかな。


人が来ない場所にダンジョンを作る意味はほぼないから、未発見のダンジョンがある可能性低そう。


その後は具体的に日本のどこにダンジョンはあるのか、世界の主要なダンジョンの場所を説明された。


アメリカ、中国、インドあたりはやっぱりダンジョンの数が多い。人口が多いとダンジョンも多いと言われているだけある。


最後にダンジョンからモンスターは基本的に出てこないとされている事と今年の元日にダンジョンからモンスターが溢れてきた事件について触れ、もし同じ状況になったら戦おうとはせず、通報して逃げるよう言われた。


開始から50分が経ち、授業は一旦終了。

チャイムの音と共に紫之宮さんは教室から出ていった。


10分間の休憩を挟んで次の授業を受けたら、今日の講習は終わりだ。



「あー、紫之宮さんにいっぱいお話し聞きたかったのに行っちゃった!」


「休ませてやれよ」


「そもそも授業の内容理解してんのかお前」


「流石にわかるって!」



本当だろうか。世界のダンジョンについてとか俺でも覚えるの面倒って思ってるのに。


世界のダンジョンマスターについては興味あるけど、ダンジョンの状況についてなんていちいち把握していらんない。てか俺英語苦手だから情報集めるの難しいんだよな。


友人たちと喋っているとあっという間に10分が経ち、チャイムが鳴って紫之宮さんが戻ってきた。



「授業を再開する。今回はステータスとスキルについてだ。この中にステータス画面を1度も開いたことがない者はいるか?」



誰も反応しない。流石にみんな1度くらいはステータスを開いてるんだな。



「誰もいないようだな。ここでは実際にステータス画面を見ながら説明していく。全員ステータスと唱えてくれ」



そういう感じで進めるのか。



「ステータス」



ダンジョンマスターは唱えなくても視界の人形マーク押せば見れるけど、ここは周りに合わせる。


久々に自分のステータスを見たかもしれない。




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個体名:若島蒼斗

種 族:ダンジョンマスター

称 号:初級ダンジョン

レベル:34

魔力値:2196

体力値:1440

防 御:632

素早さ:503

器用さ:1743

スキル:隠遁者

    改竄

    初級風魔法

    拘束


次のレベルアップまで

残り:1,835,365

所持ダンジョンポイント

残り:6,840,451


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現在、俺のダンジョンは13万〜18万ポイントほど1日に取得している。


レベルはどんどん上がり、気づけば次のレベルアップに必要な経験値が200万とか訳のわからない数字になってた。


ポイントは今後めっっっっちゃ広い階層を作りたくて貯めている状態だ。



「全員開いたか?ステータスはスキルを使われない限りは自分しか見えない。まずは上からステータスの見方を教えていく。個体名は自分の名前が入っている。種族はみんな人類と共通で、称号は何らかしらの条件を達成すると獲得する。称号にはステータスアップや魔法発動時の必要魔力減少などの特殊効果があり、称号同士の効果は重複する。獲得条件は不明な部分も多い。獲得条件が判明している称号については後で詳しく教える」



羨ましいことに人類は称号の設定という概念がなく、取得したものはどんどんステータスに反映されるようだ。


ダンジョンマスターは称号を1つしか選べないのに。いや基礎ステータスはダンジョンマスターの方が高いらしいからいいんだけど。


なお、俺のステータスは改竄で誤魔化してるからスキルを使われて見られても問題ない。


……たぶん。


いやちょっと修正が必要かも。


紫之宮さんは続けてステータス項目の意味などを黒板に書いていった。大体俺の認識と一緒だ。



「スキル欄は獲得しているもののみが表示される。スキルを新しく獲得したい場合、ステータス欄のスキルの文字をタップすると獲得できるものが表示される。スキル名の隣に書いてある数字が獲得に必要なスキルポイントの数だ。今持っているスキルポイントはステータスの1番下で確認できる」



試しに俺もステータスのスキルの文字をタップしてみた。


あ、え、ここからでもショップ開けるんだ。初めて知った。もしかして称号の設定もここからできる?


……タップでできた。便利だな。


それから授業は獲得条件がわかっている称号の詳細と探索者に広く知られているスキルの内容を教わるものとなった。


後でダンジョンに行った時に、俺の称号欄をここで知った誰でも持ってそうな称号にしておこう。


スキルの内容はスキルショップでわかるので微塵も役に立たなかった。

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