22話 探索者ライセンス取得合宿

そんなこんなでGWになった。


今日は高校時代の友人たちとライセンスを取りに行く。


探索者ライセンスの取り方は車の免許と似たようなものだと思ってもらって良い。


ダンジョンについての知識や探索者としてのルールを学ぶ座学講習と身体の動かし方や武器の使い方を学ぶ戦闘講習を行い、最後は試験をして合格したら無事にライセンスを取得できる仕組みだ。


費用は大体車の免許を取るのにかかる費用の半分くらいだろうか?それに今は期間限定でライセンス取る人は給付金が出るので、数万円程度で取れる。


講習場(兼試験会場)はダンジョンがある県には最低1つはある。今後はどの県でもライセンスが取得できるように講習場を増やしていく予定だとか。


また、講習場の中でも合宿所が併設されているところがあり、1週間ほど合宿して取るか、通いで週に何度か講習場に行って時間をかけて取るかを選べる。


俺たちは合宿を選択した。



「おひさー!」


「久しぶり」


「元気にしてたか?」


「まあ」



新生活について雑談しつつ、みんなで電車で移動し、途中バスに乗り換えて合宿所まで向かう。


今回、俺たちが行く合宿所の場所は神奈川のど田舎にある廃校跡地にある。ここ2週間ほど前に開校した。


二階建ての校舎を一部だけリフォームし、後はそのまま再利用。座学講習などは教室で行い、戦闘講習は体育館や校庭で行うそうだ。


泊まる場所は校庭の端に建てられたプレハブの建物らしい。

外から見る限り急いで作った感がすごいな。


バスを降りた俺たちはぞろぞろと元々来客用の出入り口だったであろう場所から入り、受付で名前を伝えて、入校の手続きをした。

そのままスタッフの人に案内通りに進み、到着したのは体育館だ。


ここでは適性検査を行うみたいだ。


走ったり、腹筋したりと簡単な運動能力テストをやらされた。


去年まで高校生だった俺らには余裕過ぎる内容だった。


ここで不合格だった人は帰らなきゃいけないらしいけど、パッと見帰った人は居なさそう。


無事に適性検査を合格すると、宿泊施設に案内された。


プレハブということでやっぱり壁は薄くて音の響きが気になる。それでも最近建てられたからか、中は比較的綺麗だった。


今回グループで合宿の予約をしたから俺たちは4人部屋になる。部屋には2段ベッドが2つ。ベッドの間に机、その下には小さな冷蔵庫しかない。



「せっま!」


「1番安いプランだとこうなるんだな」


「荷物置くスペースすらないとは」


「とりあえずどこで寝る?俺下がいい」



俺は寝る場所を上段に希望して、部屋入って右側の上段で寝ることになった。


ちなみに瑛士も上で遊太がその下、光介が俺の下だ。


にしても本当に狭い部屋だな。一応お風呂とトイレが一緒になってるユニットバスもある。あとは服を数着しかかけられないラックも。


電波がちゃんと通っていて、スマホは問題なく使えるのが救いだった。


自分の寝るところに荷物を置くと、今度は教室に向かった。


いわゆる説明会というやつで、合宿の1日の流れとか、1週間でやることとか、施設を使う際の注意点とかを聞く。


今日はこの後お昼を食べて、午後から早速座学講習らしい。戦闘講習は明日からだ。それまでに自分のメインとなる武器を選んでおくよう言われた。


説明を全部聞いて、食堂に向かう。



「武器かぁ。みんな何がいい?」


「やっぱり剣とかじゃね?」


「剣にも種類があるからな」



長剣に短剣、大剣に両手剣、レイピア、サーベル、バスターソード、刀……これでもまだ一例を挙げただけに過ぎない。


武器は剣以外も当然あるし、ダンジョンの中では魔法という選択肢も出てくる。


たくさん種類がある中、1つの武器を選ぶというのはなかなか難しい。


まぁでも俺は魔法主体で戦いたいし、補助武器としてナイフか短剣あたりだろうか。


喋りながら歩き、食堂に着く頃には持ちたい武器の話からみんなの理想の武器の話になってた。


食堂は職員室くらいの広さだった。てか職員室をリフォームして作ってそう。


メニューは麻婆丼セット、サバの定食セット、スパゲッティセットの3択で、料金は合宿の費用に含まれてるからかからない。



「なににする?俺麻婆丼!」


「サバ定食だな」


「じゃあスパゲッティセットかな、俺」


「俺はサバの定食セットにするわ」



ということで各々メニューを頼んでご飯を食べる。座学講習が始まるまでゆっくり過ごした。


講習の時間が来そうになったら、指定された教室へと向かう。持ち物は筆記用具だけ。ノートは必要だと思った人だけでいいらしい。


席に座って待っていると、13時のチャイムの音と共にショートカットで切れ長の目をしている綺麗な女性が入ってきた。自衛隊っぽい服を着ている。



「初めまして。私は今回このグループの講師を務める紫之宮悠希しのみやゆうきだ。座学から戦闘まで全て私が教えることになる。短い間だが、どうぞよろしく」


「よろしくお願いしまーす!」



この教室にいる人たちの中で瑛士だけが答えた。



「ふっ、元気があっていいな。じゃあ次はお前達の自己紹介だ。このメンバーで1週間同じ時間を過ごすんだから、名前も知らないのは不便だろう?右手前の席のやつから名前とひとこと言っていけ」



ということでみんな自己紹介をしていった。


この教室には講師を除き20人いる。


男女比率は8対2くらいで、男が多い。


年齢層は俺たちみたいな大学生らしき若者から、サラリーマンしてそうなおっさんまでと比較的幅広い年代がいそう。


あ、俺の番来た。



「若島蒼斗。大学1年生です。よろしく」



無難な挨拶で終わらせた。他の人たちもこんな感じだったし。


全員が挨拶をし終わると、プリントが複数配られる。


軽く目を通すと、ダンジョンについて書かれていた。

なるほど。これに沿って授業が進められて行くわけだな。


一応ノート持ってきたけど必要なかったか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る