24話 探索者ライセンス取得合宿(3)
1日目の講習が終わった。
あとは自由時間で、合宿所を使う人は23時までに戻ってくれば何をしていても良いらしい。
出かけるのもありだが、講習場の周りは畑ばかりで、店といったら歩いて20分かかるところにコンビニが1軒あるだけだ。ちなみに講習場の食堂は21時まで空いている。
俺たちは一度部屋に戻り、瑛士が持ってきていたUN◯で遊んで時間を潰した。19時頃になると、食堂に行って晩御飯を食べる。今回はカレーライスセット、肉じゃが定食セット、親子丼セットから選べて、俺はカレーライスを選んだ。
明日は朝早いから、順番にお風呂に入って今日は早めに寝る事にする。
次の日。
今日からさっそく戦闘講習が始まる。
8時頃に朝食を食べ、9時から講習スタートだ。
外でやるとのことで、みんな校庭に集まった。
紫之宮さんはすでに待っていた。
「よし、全員集まってるな。今日から戦闘講習を始める。戦闘では何よりも怪我をしない事が大切だ。ダンジョン内では身体能力が上がるとはいえ、身体の動かし方を知らないとあっという間に怪我するからな。まずは準備運動から始める」
ラジオ体操第一と第二を両方やった。第二の方を知ってる人は少なく、教わりながらやったが、これ2種類やる必要あったんだろうか。
ラジオ体操の後は柔軟だ。外でもできるやり方を教わり、20分ほどかけて身体をほぐす。
残りの1限目の時間は走って終わった。
「やばい体育の時間思い出す」
「まさか走って終わるとはな」
「これが講習なん?柔軟のやり方しか教わってない」
「あとラジオ体操第二のやり方もな」
「俺は第二も知ってたし」
俺らも、他のみんなもこれが講習という事にあんまり納得がいってないようだった。走るだけで終わっちゃうのはなぁ……別に習わなくてもできるし。
「休憩は終わりだ。全員集合!」
まだ俺らは元気だけど、10分の休憩で体力が戻らなかったサラリーマンのおっさんとかは息も絶え絶えといった様子でなんとか集合していた。
「さて、キミたちの考えていることは大体わかる。どうして講習で走らされたか疑問を抱いているだろう」
紫之宮さんの言葉にみんな頷いている。
俺も疑問に思ったので頷いておいた。
「ダンジョン内ではステータスが反映される。外で走ってもなんも意味がない。そう思ってはいないか?だが昨日の授業で話した通り、ダンジョンの外では今の体力なんだ。ダンジョン内での動き、つまりステータスが反映された自分に慣れると、外に出た時に体が重く感じてしまう事例がある。最悪その場から動けなくなる人もいた。ステータスはレベルが上がれば自動的にどんどん上がっていく。けれど本来の体力は鍛えなければ身につかない。ステータスとの乖離を防ぐために、探索者になるなら、体力作り必須だ」
……なるほど。そう言われると確かに体力作りが重要に思えてくる。
探索者みんな日常的に走ってんのかな。
「体力が必要なのはなにもそれだけが理由じゃない。ちゃんとした装備は重いんだ。大体が金属製だからな。ダンジョン内では問題なく使えても、外だと重い装備を持ち歩く事になる。町田ダンジョンで見つかったマジックバッグに入れて持ち運べば重さは気にならなくなるが、探索者全員がマジックバッグなんていうアイテムを持てるわけじゃない。装備を持ち歩いて息を切らすなんていうダサい姿を晒したくはないだろう?」
びっくりした。急に俺のダンジョンの名前出さないでくれよ。
てかマジックバッグ人気無いって思ってたけど需要あったんだな。せめて数人分の装備が入れられる量入るんだったらもっと人気出るだろうか。
でもなぁ……マジックバッグ(小)の次の大きさが(中)。コンテナくらいの荷物が入るようになる代わりに、ポイントは50万必要なんだよな。
うん。やっぱりない。
一通り走らされたら理由が話し終わると、いよいよ実践の練習となった。まずは刃がない木剣を上からまっすぐ下に振るだけの素振りをする。
持った時は意外と軽いと思ったが、素振りをするのはかなりキツい。
あの女レベル1のステータスが低い状態で刀振り回してたよな?結構凄いことしてないか。
「手だけで振るな!全身を使え!そこ、剣を振り抜きすぎだ。それじゃすぐ次の攻撃に移れなくて死ぬぞ!敵はこちらが体制を整えるのを待ってくれないからな!」
10分ほど素振りをしたら、5分休んで次は横振りの素振りだ。ダメな姿勢をした者から紫之宮さんの指摘が入って矯正される。
これも10分ほど行ったら次は形をいくつか教えてもらった。ようやく戦闘講習っぽくなった。
形通りに剣を振るのもキツい。普段使わない筋肉を使ってる気がする。
走るより体力を使って、授業が終わる頃にはクタクタになった。
3限目。体育館に移動して受身をとる練習をひたすらした。
高校の時柔道の授業で似たようなことをした事があり、さっきよりはスムーズに出来た気がする。
4限目は増設されたっぽい弓道場で、弓の練習だ。といっても、弓道ほど厳格な所作をするわけではなく、ただただ矢を引く、狙う、放つ、の3つの動きを学んだ。
ここで分かったのは、俺に遠距離攻撃の才能は無いってことだな。魔法使うとしても中距離からにしよう。
次はお昼だ。各々メニューからひとつ頼んで席に着く。体力を消費しすぎて食欲があんまりない。
「あの、私達も一緒に食べても良いですか?」
のそのそとご飯を食べていたところ、同じグループの女子3人組に話しかけられた。
名前なんだっけ。確か全員花の名前が入ってたと思うんだけど。
「えっと、梅谷さんと桜田さんと椿原さんだったよね?お隣どうぞー」
遊太がさらっと名前を呼んで席に誘導した。
よく覚えてたな。
「せっかくだから席くっつけちゃおう!」
ということで4人席をくっつけて7人で机を囲んで食べる事になった。
「皆さんは大学生でしたよね?お友達同士ですか?」
「別に敬語じゃなくてもいいよ!同い年だよね?」
「どうでしょう。私たちは全員大学2年ですけど」
「あー、じゃあ俺たちの一個上ですね。すみません生意気で」
「いやいやいや、大丈夫です。えっと大丈夫。全員フランクに行こう」
「うんうん」
「はーい」
流れで連絡の交換をしつつ、どこの大学に通ってるのだとか、どうして探索者になりたいのかをお話しする。
いざとなったら協力し合えるし、探索者の知り合いが増えるのは悪い事じゃない。
その分ダンジョンマスターだってことがバレる確率は上がるけど、瑛士の時みたいなのを気をつければ大丈夫だろう。
みんなで仲良く食べると、次はみんなで仲良く教室に向かった。
午後は2限とも座学だ。
5限目は探索者関連の法律を、6限目は武器の取り扱い方法についてを学んで2日目の講習が終わった。
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