20話 巻き込む
なんのアイテムがドロップしたら探索者は喜ぶのか。
今2番目に悩んでることである。
喜ぶだけならわかる。金とかダイヤとか換金制の高いアイテムだ。けれども俺の目指してるのは人類の味方をするダンジョンなので、もう少しダンジョン攻略に役立つ物を用意したい。
ダンジョンに用意したアンケート?
おそらく掲示板の影響だろうけど、9割の回答が6階層までスキップできるアイテムだった。
今の所スキップさせる気はないから、マジで参考にならない。
反応が面白いからアンケートはそのまま置いておくけどさ。
「いや、なんで俺ら?探索者の事情なんてわかんねーって」
「探索者に詳しくないからこそ聞いてるんだよなぁ。俺のダンジョンでアンケート取ったら俺のダンジョンの攻略に有利なものしか答えてくれなくってさ。イメージでいいからなんかない?」
「強い武器とかだろうか」
定番すぎるな。
でも武器は無理。
「武器は使わない種類のが当たったらハズレ扱いになるじゃん?人によって当たり外れが違うのはあんまり前向きじゃない」
「はいはい!お泊まりセット!」
「モンスター避けできる結界アイテムならいいと思うけど、まだお泊まりしてまで攻略する探索者いないから却下で」
結界アイテムはわりといいんじゃないだろうか。設置タイプとかだったらダンジョンの滞在時間を伸ばせる。
ドロップアイテムのショップにあるかな。
あ、あった。
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設置型守護結界(初級)
効果:ありとあらゆる攻撃から守る結界を張る。
効果範囲は2m。効果時間1時間
必要ポイント:12万
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高すぎる。初級で10万超えるのかよ。
これをドロップアイテムにはまだできないな。
余裕がない。
「じゃあさ、荷物をたくさん入れられるマジックバッグとかか?」
「ゲームで言うインベントリってやつか」
「そうそう」
「ちょっと見てみる」
見境なく荷物入れられるバッグなんてあったら、謎解きゾーンぼっちで攻略可能になっちゃうし、ありとあらゆる便利アイテムの持ち込みが簡単になっちゃうしで、あんまり良いことないんだよなぁ……
でも探索者的には確かにありがたいか。
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マジックバッグ(小)
効果:不思議な空間が広がっており、中に入れたものの重さが感じなくなるバック。
内容量は50L。バッグの口より大きいものは入れられない
必要ポイント:5万
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ポイントはそこそこ。ギリギリ許容範囲内だ。
容量が50Lと登山用リュックくらいの大きさで、思っていたより入る量が少ない。
もっと容量が大きいバッグも当然あったけど、その分ポイントはかかる。
一応でっかいリュックで運ばないといけないものがポーチサイズで運べるようになるって考えると悪くはないのか?
「物はあったけど60点だな」
「何その採点」
「悪くはないし合格点ではあるから良いけど、もうちょっと上を目指してみたいという俺と心情を表している」
「なるほど?」
「つまり他のにしたいんだな」
「キープで」
友人たちに任せっきりなのもどうかと思うので、自分でも提案してみることにした。
と言ってもアンケートの回答の残り1割の方だけど。
もらった回答の中から比較的良いかなと思ったものを紙に書き出した。
・スキルの書
・魔法のランタン
・マッピングマップ
・アクセサリー系アイテム
・状態異常回復薬
「ダンジョンでアンケ取って実現可能なやつをピックアップしたんだけど、どう思う?」
「このスキルの書ってやつはなんだ」
「使うとスキルポイントを使うことなく新しくスキルを覚えられるアイテムだ」
「便利だな」
なお消費ポイントはダンジョンマスターがスキルを買う時の2倍かかる。つまり最低2万から。
2万代のスキルは人類でいうスキルポイント1でとれる簡単なものしかないが、自分の才能以外のスキルも取れると考えたらだいぶいいアイテムだと思う。
「じゃあこの魔法のランタンは!?」
「瑛士は自分でショップ見て確認できるだろ……普通にダンジョン内で使えるランタンだよ。どんなに激しく動いても火が消える心配がない」
「それって拾えたら嬉しいか?」
どうだろう。
一般的な探索者にとってはあんまり魅力的じゃなさそうなら却下にしとこう。
俺のダンジョンだと暗闇ゾーンで使えちゃうから進んでドロップさせたくないしな。
「じゃ、ランタンは無しで。マッピングマップは歩いた道が自動的に記入されていく地図だ。ダンジョンならどこでも使える。アクセサリー系のアイテムはステータス向上効果のあるアイテムで、形状も効果もいろいろ。武器や防具よりは人を選ばないのがポイントかな」
状態異常回復薬は俺があの女に使ったやつである。
まだどのダンジョンにも状態異常攻撃を仕掛ける敵があんまり出てこないが、そのうち必須になりそうってことで候補に入れた。
「俺だったらスキルの書が欲しいかも。本来選べないスキルも取れるってことだよな?」
「運が良ければな。まぁでも俺も第一候補はスキルの書にしてる」
「あんまり覚えるの得意じゃないから俺はマッピングマップっていうのがいいな!」
「無しではないけど……」
このマップ、弱点があるのだ。
俺のダンジョンの6から9階層みたいな複雑な道の階層には使える。
でも、このマッピングマップは障害物は記入してくれないから、道がそもそもない、例えば11階層のような一つの大きい部屋の構造をしているとまともに機能しない。
また、このアイテムは1階層分しか記録してくれない使い切りタイプとなっている。ちょっとコスパが悪い。
俺のダンジョンに侵攻してきたあの女のようにマッピング能力が皆無な人もいるから、無しでない、という評価になるんだよな。
「
「出された案以外でもいいか?」
「もちろん。むしろそっちの方が助かる」
「俺はダンジョンの中を映像に残せる物があればいいと思うんだが」
「カメラってこと?」
地上の機器は使えないから当然カメラもダンジョン内では使えない。
カメラがダンジョン産なら話は別だけどショップにそもそもあるかな。
「それ、探索者欲しがるか?」
「ダンジョンのことをもっと広めれば探索者になりたい人も増えるだろ?人が増えたら攻略スピードも早くなる」
「おお!賢い!」
「つまり今の探索者をどうこうするんじゃなくて、今の探索者にダンジョンのことを広めてもらって、未来の探索者を増やしてもらおうってことか」
「ああ。それにモンスターやダンジョンの攻略方法とかも言葉で聞くよりは映像で見た方がわかりやすいだろ」
現在攻略をしている探索者達が欲しがるかと言われたら少し微妙かもしれないが、未来の探索者を増やすためって理由は俺に刺さった。
俺のダンジョンは初心者向けだから初心者が増えないと困る。
それっぽいアイテムは……あった。
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追尾式映像記録機(ver.1.00)
効果:使用者を自動的に追尾して映像記録を残す。
動力源は魔核で、大きさによってよって動作時間が異なる。
必要ポイント:1万
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撮った映像はプロジェクターみたいに壁に映すことができる丸いフォルムをしたカメラだ。
意外と安い。ちなみに追尾式じゃなくて手持ち式だったら5000ポイントからだったけど、探索者が片手をカメラで塞がないだろうって事で追尾式の方を選んだ。
「なかなかいい感じのアイテムありそうだったわ。5割くらいは適当なスキルの書をドロップするようにしておいて、残り3割はカメラ、あとの2割は今日出た案を試してみる事にする」
「おお」
「そのうちカメラ拾った探索者がダンジョン内の映像広めるだろうから楽しみにしてて」
「はーい!」
「いやお前はいつでも見れるだろ」
「どうやって?」
嘘じゃん。プレビューすらも知らないのか?
瑛士にはいつも通りシロンちゃんに聞けと言いつつ、2人に質問あるかと尋ねてみたらダンジョンの作り方とかドロップさせるアイテムをどうやって入手するのかとか聞かれたから、ダンジョンポイントについて軽く話した。
俺の話でなんとなく理解はしたようで、他に良いドロップアイテム思いついたら連絡をくれるそうだ。
話がひと段落ついてからは、みんなで駄弁りながらゲームをして、日が暮れた頃に帰した。
いやー、よかった。悩みが2つ解決できて。
ダンジョンマスターの相談に乗って案まで提案したんだ2人は。
相談に乗って案出しをしたって事は、"ダンジョン運営を協力した"ともいえる。
こっち側に巻き込んでおけば、もし何かあっても後ろめたさで進んで俺のことは口に出せないだろう。
元々あの2人が俺のことを周りに言いふらすとは思わないけど、念には念をかけて損はない。
というか、あの2人よりも同じダンジョンマスターである瑛士の方がうっかり口を滑らしそうで怖いんだが。あれどうしたらいいんだろう。
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