夏至の祭り
七日間つづく
エルムトのあちこちで、花や葉っぱで作った冠をかぶった娘たちの姿が見える。
湖のそばでは焚き火が行われたり、花占いや卵占いが人気だったり、手を繋いで歌ったり踊ったりと、人々は思い思いの祭りを過ごしている。
本土のイサヴェルからもたくさん人がやってきて、いっしょに祭りをたのしむ。
目一杯お洒落をした娘たちにとって、この期間は絶好の機会である。娘たちから男たちにダンスを申し込んで、そこから付き合いをはじめる。それが結婚へと繋がるのだから、誰しも皆必死なのだ。
一方の
朝露に濡れる前の薬草を摘むのは、巫女であるエリサの役割だ。
この期間の朝露には治癒力が込められていると伝えられていて、病気や怪我に苦しむ人のために使う。また、その神聖なる時間に、他の者が祈りの塔に近付くことはできない。だから
イヴァンを含めて、他の
エルムトの人々は月と
(先代の巫女たちは何度も危険な目に遭っている。エリサもいつ、命を狙われてもおかしくない)
隊長のマルティンは、
巫女同様に、
だが、年々男の数は減る一方だ。
戦士ではない男たちを掻き集めても、大国に対抗できるほどの力はない。だからこそ、個々の力をあげていくしかないと、そうイヴァンは思っている。
「だから、あんなやつ、放っておけばいいのに」
吐き捨てるように言った銀髪の少年の名を、ミカルと言う。
イヴァンとおなじく
「そういうわけにもいかない。あいつも、
「はっ! まともに訓練にも参加したことのないやつが、
ミカルはさっきまで振り回していた木剣を地面に投げた。
イヴァンはため息を吐く。ふたりともそれぞれ任務を任されていたが、空き時間を見つけては訓練場へと行く。警固に当たる際に余計な声を落としてはならないし、石のようにじっと固まっているので、身体を動かしたくなるのだ。
「そう言うな。レムにだって、いろいろあるんだよ」
「色々って、なんだよ」
ミカルは相当に
「だいたいあいつ、要人の警護にも来ないじゃないか。どうせまた、逃げてるんだろ?」
「逃げてるんじゃない。……ちょっと具合が悪いだけだ」
「なんだよ、それ。ほんとに弱っちい兎だな」
「エルムトの気候に慣れていないんだ。体調を崩すのも無理はないさ」
「どうせ仮病だろ? そもそもエルムトの人間じゃないやつに、
「ミカル……!」
辛抱強くミカルを
イヴァンは思わず声をあげてしまっていた。ミカルは一瞬だけびくっと身体を震わせたものの、またすぐ元の生意気そうな顔に戻った。
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